終わらざる夏

 戦後生まれの浅田次郎が書くには勇気がいったであろう。まして出版となると、一段の勇気が。それだけに、構想から30年、丁寧に時間をかけて調べ上げたであろう、事の真相を。世間から揶揄され、酷評や批判を受けることも覚悟したであろう。

 出版記念講演会の後、サイン会と握手会が壇上であった。壇上にひとりの老人が並び、順番がきた。浅田はすぐに戦争の当事者だとわかったらしい。年齢もそうだが、感性的にそう思ったのであろう。浅田はすぐに頭を下げた。その戦争を体験した者への敬服の念とともに、戦後生まれの自分が題材にしたことへの侘びであったろう。

 講演会でも握手会でも、終始、浅田は低姿勢であった。戦後生まれの自分が語る資格がないことは重々承知していること、それでも書かなければいけないという責務を感じたこと、このような理不尽を通り越した無駄な死があってなるものか、そんな思いであったと推察する。戦後生まれの浅田だからこそ、書く意味がある。まだ読んでいないこの話題作、読んで亡き犠牲者を供養したい。
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