理性と感情






 人間には理性と感情という対立軸があり、ときの状況や環境、相手によって理性が強く働いたり、感情が強く働いたりする。相手がいる場合、そのことによって喧嘩をしたり、分かち合ったりもする。その相手が友だちや夫婦であればまだマシなのだが、国家の行く末を左右する案件となれば、これはただ事では済まされない。


 そのただ事でない事態が発生してしまった。イギリスのEU離脱国民投票結果が世界を驚かせ、瞬く間に、経済不況の波が世界に拡散している。残留派のキャメロン首相が辞任を宣言する一方、EUには離脱を正式に通告せず、離脱交渉ができないまま混沌とした状況にある。


 そもそも、国民投票の選択そのものに問題があったのだと思う。EU離脱派による攻勢を受けて、キャメロン首相は「そこまで言うのだったら国民投票して決着しようじゃないか」と感情的に意気込んだ。まさか国民投票で負けるとは夢々思わない、高をくくった判断であった。キャメロン首相のこの感情的な判断が火種となり、国民全体が感情に走り、感情が理性を超えた結果を招いたと言える。


 イギリスのEU離脱が不適切な判断であり、残留が正解であるということを言っているのではない。問題は、国民投票後に離脱派の幹部が離脱条件の約束を反故にしたり、離脱に投じた人を中心に自身の投票行為を悔いたりして、国民全体が失望に陥っていることである。それほどに、この国民投票は中味を熟知した上での慎重な選択ではない、感情的なアクシデントであったことを物語る。


 さてそれでは、この場に及んでは回復する術(すべ)はないのだろうか。ひとつの方法として、キャメロン首相が辞任しないことだ。国民投票の結果とその後の世論風潮から、離脱しないと宣言するのである。もうひとつは、EUに離脱の通告をしないことである。EUの規約には相手国が離脱通告して初めて離脱協議が始まるとされている。この不備な規約を逆手にとって離脱通告しないことはありうる。最後に、首相改選して新しい首相のもとに離脱しないと宣言することである。


 感情という衝動と理性という根気。その狭間で人間はそのときどきで揺れ動く。感情という衝動はいかにも勇ましいが、根気ある理性もまた勇気あることである。キャメロン首相には勇気ある根気によって有終の美を収めてもらいたいものである。




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