朝日の「それから」






 人によっては朝日新聞をことさら嫌う人も多いようだが、私はなぜか若い頃から朝日を読み続けてきた。幼い頃から、貧乏してもなぜか新聞だけはとっていて、それも朝日に執着した家庭に育った影響かも知れない。いつしか私も、朝日をとっているだけでインテリだと勘違いしていたふしもある。

 その朝日新聞といえば、天声人語。推敲を極めた名文に心打たれて、若い頃から感銘したものである。その名文は大学受験の問題にも引用されるようになり、つい最近では天声人語書き写しノートがブームになった。

 今でも天声人語の名文は切り取ってスクラップ帳(といってもただの裏紙であるが)に貼り付けているが、最近では貼り付ける機会がめっきり減った。名文はおろか、この文章はどうかと思うものが出てきている。いつだったか、あまりのひどさに朝日に直接電話で意見した。そのときの、つき返すわけでもなくすんなり認める編集室の対応にも落胆した。

 天声人語の質の低下どころの話ではない。最近では、朝日の報道には重大な誤報がありもろもろの問題が噴出し、多方面からの批判がすさまじい。ブレないはずの朝日が、今では朝日批判が社会現象化している。

 最近の朝日の話題のひとつとして、漱石の「こころ」が朝日新聞に連載されて100年を経過したのを記念して、100年振りの漱石復刻版が随時、連載されていることである。「こころ」に始まり、「三四郎」と続き、今連載中の「それから」もそろそろ終盤であるが、最近、読むのが嫌になってきている。

 なぜ読むのが嫌になったのか。「それから」の主人公である代助が、いい歳をして親に無心する風太郎の身でありながら、お手伝いや書生を使うその生活態度に鼻持ちならない。加えて、優柔不断な態度、のらりくらりの物言い、どっちつかずで煮え切らない態度、それなのに理屈っぽい、その人間性である。

 代助は、食うために働くのは誠実な労働ではないと拒む。しかし最後は職を探しに町へ出る。すると目にするいろいろなものが頭の中に飛び込んできて、すべてが音をたてて崩れていく。作者である漱石自身が、人間はなぜ働くのかについて結論を得ていないように思う。

 朝日の昨今の紙面の質の低下と批判の嵐に鑑み、漱石の「それから」ではなく朝日の「それから」を憂うものである。




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No title

geoさん
新聞も愛着があると変えるには勇気が要りますね。
うちも昔朝日でしたが
いつだったか沖縄ンゴ礁での自作自演記事があったでしょ?
あれをキッカケに変えてしまいました。
だからと言って他ならいいという感じでもない
新聞と繋がっていたい、そんな感じで取っています。
ちょっと哀しいことですね。

Re: No title

チカちゃん、
お帰り~。
北海道も暑かったでしょ。

> いつだったか沖縄ンゴ礁での自作自演記事があったでしょ?
> あれをキッカケに変えてしまいました。

ついに切れましたか。

> 新聞と繋がっていたい、そんな感じで取っています。
> ちょっと哀しいことですね。

いえいえ、繋がっていたいその気持ちが大切です。
新聞に限らず。

No title

大新聞も
広告の関係で
中立ではいられない
気になる日本の
「それから」

Re: No title

リプルさん?
もしかしてrippleさん、
どうもです。

> 大新聞も
> 広告の関係で
> 中立ではいられない

そうでしょうね。
ブレない根性もちの報道機関
出てこないものか。
あ、赤旗か。
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