知の継承






 今年もまた偉大なる知の巨匠を亡くした。「思想の科学」創刊者である鶴見俊輔さんである。同じようにここ数年、我々は日本を代表する知の巨匠を次々に失っている。丸山眞男さん、加藤周一さん、吉田秀和さん・・・・・・。

 彼らが知の巨匠と称される所以は、ただ単に知識が広く深いからではない。共通することは、事の本質をとことん自らの頭脳で考え抜き、自らの言葉で発することにある。どんな相手にも逃げず臆せず、堂々と正面から立ち向かう姿勢にある。そしてその思想は、決して既成の概念や考え方に囚われることなく、あくまでも独創的である。玉石混交の中から、とかく見失われがちな炉端の石に大きな意義を見出そうとする姿勢に偉大さがあるのだと思う。

 そして彼らの何が一番すごいことかって言うと、知の幅がとてつもなく広くて底が深いにもかかわらず、決して威張ることがないことだ。ここが偉いところだ。巨匠と呼ばれし人は数多なれど、ほんとうの巨匠とは、頭が下がるほどの力量と親しみ易さと品格を備えた人間であると私は思う。そういう意味で、彼らは日本が誇る真の知の巨匠といえる。

 死して改めて彼らの偉大さに尊敬するばかりであるが、さて、彼らを失いし行く末の日本はどうかと考えると、不安感と危機感を感じざるを得ないのである。我々は彼らの知の精神を継承できているだろうか。子や孫に知の精神を継承しようとしているだろうか。はなはだ疑問であり、まずは私自身ができていないことに焦りに似たものを感じるのである。

 日本は世界は、ますます混沌とした時代を迎えようとしている。戦争は失くしたいが絶えることはあるまい。経済も政治もますますグローバル化し、知が知を犯し、別次元の犯罪の連鎖を伴う時代へと確実に進むであろう。子や孫はそのような時代に今からどっぷりと浸かるのである。そんな行く末の時代だからこそ、確固たる己自身の考え方が問われるのである。そんな時代でこそ、事の本質を己自身の頭で考えることが必要なのである。

 夏目漱石没後100年のこの年、漱石がほんとうに訴えたかった「個人主義」の考えが未だに日本人に根付いていないことを憂慮する。国民はおろか、国会議員や先端的地位の者にもである。個人主義とは利己主義にあらず。先入観や既成概念に囚われることなく、己の頭で考え、己の言葉で発し、己の意思で行動することである。日本人が真の意味の個人主義を身につけて物申すことのできる時代を、そして真の民主主義国家になることを所望する限りである。





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No title

お久しぶりです。

言わんとされていること、よ~くわかります。
いま世の中を牛耳っていると思っている世代の
思想の稚拙さにこれからの将来を
憂えます。

Re: No title

秋桜さん、
お久しぶりです。
横浜絵画展のことなど、
いつも読み逃げしています。
体調も少しづつですが、
回復のご様子で何よりです。

> 言わんとされていること、よ~くわかります。

わかってもらえて嬉しいです。
なかなかこの種の話題は日本人は苦手なようで。
このことは、将来の日本にとって
一番大切なことかも知れません。

もうすぐ体内に台風を抱えて1年
ですね。
ゆっくりと焦らず気ままに
養生してくださいね。
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