覚悟の受け皿






 口永良部島の噴火と避難から早2週間以上が過ぎた。屋久島に避難している住民の一部が避難所から町が用意した町営住宅へ入居を開始するなど、早くも避難は長期化の様相を呈している。気象庁が一旦出した避難指示を解除するには、噴火状況など眼で見える変化とともに、それ相応の具体的な裏づけデータが必要となる。無論、常時収集可能な地震回数の減少も有力な判断基準となるが、決定的には山体の地下温度や歪といった噴火に関わる直接的なデータが決め手となる。しかし、その詳細なデータを得るには今の観測体制では無理である。ということは、新たに観測機器の設置が必要であり、それには長期を要する。つまり、長期の避難は必至ということになる。

 長期の避難は誰のせいでもない。国を責めても始まらない。避難解除を出そうにも出せない国の事情もある。しかし現実問題として、長期避難となれば住民それぞれに苦悩を伴い、場合によっては自己責任でもって島に帰りたいという方も出よう。家畜も家族であり、どうしても牛や鶏を見放すことができない人もいよう。島ならではの生活様式でないと体が順応できない人もいよう。それよりも何よりも、生まれ育った島から離れたくないという思いを募らせる住民もいようと思う。人生設計を左右する案件に真剣に考え抜いたあげく、覚悟をもって島に帰りたいという人が仮に出た場合、誰が止めることができるであろうか。人間が自由に生きる権利を誰が剥奪することができようか。そのような場合、無論、自己責任を明確にした上であるが、それを許すことしか方法はあるまいと思う。

 2000年に噴火した三宅島の噴火に伴う全島避難においては、避難指示が解除されたのは実に4年半振りのことである。子どもの成長を考え合わせれば、何もかも生活様式を一変させるに足る4年半である。この間、住民はどのように人生設計を修正して、どのように実行できたのか。4年前の東日本大震災以降も、我々は繰り返し、避難指示と人生設計の選択に苦悩する人々を見てきた。彼らの必死の決断に周囲はどのように答えたのか。

 事は災害に限らず、我々は自身の人生設計を大きく変える決断をしなければならないときがある。例えば、会社をリストラされたときに、今後どのようにして家族を守る方法を選択するのか。自身が癌に侵されたときに、どのような治療を選択するのか。家族が重篤な病に陥ったときに、介護のために人生設計をどのように軌道修正するのか。いろいろな人生における重大な岐路の局面において、人は覚悟をもって選択を決断するときがある。また決断しなければならないときがある。そのとき最も必要なものは、本人の覚悟を認めて受け止める受け皿であろう。家族であり兄弟であり、友人や仲間であり、もっといえば病院であったり社会であったり国であったりもする。生きるための本人の選択と覚悟を最も尊重し、それをしっかりと受け止めることができる人や組織の受け皿でありたい。口永良部島の避難に関するニュースを見ながら、ふと、そういう風に思った。




スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

こんにちは~~~♪

こんにちは。

三宅島の噴火のときも、最近では福島の酪農家の方も、
避難生活を余儀なくされて、自死されてしまいましたよね。


今回の口永良部島の噴火でも、酪農家の男性が話していました。

豚にご飯をやらないと、死んでしまうって。

日本という火山に地震が多い国に住んでいて、
これらに依る大災害は、どこでも、いつでも起こり得る。

明日は我が身。

だけど、島民の生活は噴火しようが続くわけで、それは今、即、一瞬の猶予もないのですよね。

自衛隊に守ってもらってせめて、家畜のケアだけでもできないのかなって、思います。


Re: こんにちは~~~♪

心の窓さん、ようこそ。

>豚にご飯をやらないと、死んでしまうって。

この言葉の意味は大きいです。
豚が死ぬイコール自死に近いのです。

>島民の生活は噴火しようが続くわけで、それは今、即、一瞬の猶予もないのですよね。

ある意味、日本国民は自然災害を承知の上で
覚悟して生きているのだと思います。
その覚悟を法の規制や基準で阻止していいものでしょうか。

No title

geoさん
こんばんは。

結局 何においても人生の転機には
強い意志を持って覚悟を決める
そして周りの人間は出来うる限りそれを尊重する
たしかにgeoさんの仰る通りです。
それが出来たら本当の尊厳だと思います。

Re: No title

チカちゃん、
おはようございます。

> それが出来たら本当の尊厳だと思います。

最近、人の人としての尊厳とは何かということを
考えることがあります。
結論は出ていませんが、
究極の尊厳は、死に方の選択ではないのかと。
そんなことを考えるのは、もう終盤なのかも知れません。

No title

geotechさま。
この記事拝読し「覚悟する事」あらためて覚悟致しました(爆)
ほんとに 一生の間 今此処って時があります。逃げずにぶつかり
覚悟を決め やり抜く心が 自らの足で立つ「自立」であり
他に責任転嫁することなく 自分を生きるということ 感じました
いつも 素晴らしい記事 有り難うございます(^^)

Re: No title

ミー子さま
おはようございます。
梅雨空の鬱陶しい毎日ですね。
お元気でしょうか。

>「覚悟する事」あらためて覚悟致しました(爆)

いえいえ、ミー子さんはいつも覚悟して
らっしゃいますよ。
自らの足で立つ「自立」もしていらっしゃいますよ。
ただ、覚悟の受け皿に恵まれていないのかもです。

いつもありがとうございます。
プロフィール

geotech

Author:geotech
geotechのブログへようこそ!

団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
blogram投票ボタン
フリーエリア
シニア・ナビ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR