孤高のハンマー






 地質屋が現場で使う数々の道具の中で、ハンマーは最も大切で基本的なツールである。岩石を叩いて岩盤の種類や硬さ、風化変質の程度などを調べ、岩石サンプルを採取する。今使っているハンマーは、前にいた会社を退職する際に、花束とともに部下から贈られたものである。あれから25年間も大切に使い続けている。


新ハンマー




 この種のロックハンマーは、たかがただの「とんかち」だとお思いでしょうが、されど結構高価なものです。今でこそ通販でも買えるのだが、昔は東京・神田のとある店でしか輸入していなかったので、上京しては品定めしたものだ。

 地質屋に当てられた諺の中に「崖から落ちてもハンマー離さず」というのがある。それほど地質屋にとってハンマーは大切なものである。もっとも地質屋に当てられた諺のベストワンは「地質屋は見てきたような嘘を言う」である。何億年も前のことを、さぞ今見てきたかのように、まことしやかに理路整然と物語るからである。

 地質屋にとって大切なこのハンマーは、現場では時に対決のツールにもなる。3人地質屋が寄ると3とおりの見解が出てくると言われる。現場で地質判定をするために、各々がハンマーで岩石を叩く。ある地質屋が岩石を叩いて、割れたサンプルを見せながら、これこれと説明する。すると別の地質屋は別の箇所の岩石を叩いて、そうではないその証拠にと露頭を指す。そんな調子で決着しないものだから、地質屋を呼ぶんだったらひとりにしとけということになる。

 これがただの地質判定であれば大事に至らないが、活断層か否かという判定になると喧々諤々となる。ハンマーか鏝(こて)で地層を剥ぎ、ここでこう切れているから活断層に間違いないという御用学者に、私は幾度となく異論を唱えて噛みついたことか。ここに地形学者が割って入って机上の空論をほざくと、地質屋は論より証拠であると火花が散る。癌だと診断することは容易でも、癌ではないことを証明する方がいかに難しいことか。それでも私は容易に癌とは診断しない主義である。

 孤高の外科医・当麻鉄彦を描いた「孤高のメス」になぞらえて、「孤高のハンマー」と呼びたい。そんな思いでいつもこの愛おしい相棒を現場に携帯している。





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No title

こんばんは。

何度か読み返しました。
お書きになったことの、表面的な意味は理解できます。
文系の頭しか持たない私には、何処まで真意を理解していることやら。
地質屋と地形学者の違いも、何となく解りますが・・・

石採集

こんにちは、同じハンマーを持って石を集めていますよ。今年は淡路/沼島へゆきました。

Re: No title

吾喰楽さん
おはようございます。
ご無沙汰です。
慌ただしくなりました。

> 文系の頭しか持たない私には・・・・・

いえいえ、あなたは文系博士というより
食の伝道師の称号を与えましょう。
尊敬いたします。
でも食も奥が深いですね。
毎日作る味噌汁の味が
気分で多少違うのです。

Re: 石採集

藤の花さん
こんにちは。
てっきり鉱物女子かと
勘違いしました。

>今年は淡路/沼島へゆきました。

そうでしたか。
よほど鉱物採取が好きなのですね。

No title

「ショーシャンクの空に」という映画を思い出しました。
ご存知かもしれませんが、まさにこのロックハンマーが
鍵になっている名作です。夏ごろBSで放映されました。
なかなかインパクトのある映画でした。検索すれば、
あらすじや動画が見られるかもしれません。

Re: No title

rippleさん
こんにちは。
いよいよ残すところ
あと2日になりましたね。

> 「ショーシャンクの空に」という映画・・・・

知りませなんだ。
あとで検索してみます。

今年も幾度もブログ訪問
ありがとうございました。
来年もよろしく。
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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