角打ち談義







  「角打ち」と言っても知らない人が多いかも知れぬ。とくに関東の下戸は間違いなく知らないだろう。語源は諸説あるらしいが、聞くところによる最も有力な説はこうである。昔、酒屋は計り売りの時代であり、客は徳利をもって買いに行ったもの。持って帰り飲むことに我慢ならず、その場で酒を所望。酒屋も心得たもので計量用の枡で呑ませた。枡の角で飲ませたから「角打ち」と命名されたとか。

 ただ、「飲む」ではなくなぜ「打ち」なのか。これも聞いた話。安兵衛が高田馬場の討ち入り直前に酒屋で枡酒を一升引っかけて、仇打ちに走って向かったとか。そこで枡の角で一升引っ掛けて仇を討つ。すなわち「角打ち」と。これには少々無理がある。

 ま、語源はともかく、私は学生時代からこの「角打ち」のファンである。なにせ安いのが最大の魅力。酒屋の酒を原価で飲めるのだから。だったら買って帰って家で飲めばって?違うんだなぁ、それが。酒の匂いがどっぷり染み付いたどでかい板のカウンターで立ち飲みする、そのいなせな飲みっぷりがいいのだ。つまみは酒屋においてある乾き物でいい。それをくわえてはチビチビやる。そうしてるうちに隣の客と言葉を交わし、そのうち、そこいら辺で意気投合する。角打ちならではの醍醐味なのだ。

 北九州の炭鉱町で始まったというこの角打ち。昭和の時代にはどこの街にもあった。夜勤明けの労働者が朝から角打ちに集う。昭和から平成へと時代は移り、角打ちは次第に消えていった。それが最近また静かなブームとなっている。本場北九州には北九州角打ち文化研究会なるものがある。北九州市には現在200軒もの角打ちがあり、小倉駅界隈だけでも15軒ある。神戸にも角打ち研究会もあるらしい。ここ広島にも、ついに広島角打ち研究会なるものが新たに発足したらしい。

 魅力的な角打ちであるが、角打ちには暗黙のルールというかマナーがある。まず、客だと思って飲んではならない。原価で飲ませていただいているという、ひれ伏した態度が必要。次に、長居をしてはならない。せいぜい1軒の店に1時間程度。次なる角打ちに梯子する。それから酩酊してはならない。酩酊すると他の客の迷惑になり、追い出しをくらう酒屋もある。さらに、政治、経済、宗教などの小難しい話題をしてはならない。こういう話をすると喧嘩になり長居にもなる。

 洒落たバーも綺麗なお姉さんがいるクラブもいいが、私には角打ちが似合っている。ケチだからではない。角打ちには昭和の時代の人間らしさ、泥臭さ、日本人のスピリッツがあるように思えるからである。と格好つけて言ってはみたが、ほんとはただの酒飲みなのです。





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ごちそうさまです

大好きな話題ですね~。
「落ちぶれ果てても、昔は呑兵衛よ」としては、拍手して上がります。
「暗黙のルール」の件は、大いに昔を思い出しました。
ショットバーのようにキャッシュ・オン・デリバリー持に、小銭入れを覗きながら飲みました。
話は飛びますが、一時は東京下町の酒屋で流行った酒の自動販売機ですが、新潟新幹線の越後湯沢駅にある御土産コーナーに並んでいます。
それで、新潟の地酒を試飲できるのですが、20台以上の販売機を試飲していると新幹線に乗れませんね。

Re: ごちそうさまです

呑兵衛あなさん
さっそくの来店、おおきに。
やはり名に恥じない呑兵衛ですね。

> 「落ちぶれ果てても、昔は呑兵衛よ」としては、

落ちぶれ果ててるのですか?

>新潟新幹線の越後湯沢駅にある御土産コーナーに並んでいます。
> それで、新潟の地酒を試飲できるのですが、20台以上の販売機を試飲していると新幹線に乗れませんね。

あっは、そりゃそうでしょう。
足取りこまちに乗らないと。
それにしても、地酒の自販機があるのですか?
羨ましい。
さすがに酒どころ広島にもありません。

No title

こんばんは!

広島、痛ましいことになっていますね。
行方不明の方が、一刻も早く、一人でも多く、見つかることを祈っています。

決して下戸ではありませんが、関東人の吾喰楽は、「角打ち」なる言葉を知りませんでした。
でも、その意味するところは、よく解ります。
入社当時は、日本橋のど真ん中にも、その手の酒屋がありました。

「角打ち」ではありませんが、立ち飲みの居酒屋もありました。
現金引換えです。
つまみは、乾き物と缶詰です。
女性が居る店へ行く前の下地作りに、よく行きましたよ。

懐かしいですね~
そして、お陰様で、一つ利口になりました。

Re: No title

吾喰楽さん、
こんばんは。

> 広島、痛ましいことになっていますね。

はい、とても心配です。
ご心配、ありがとうございます。

> 決して下戸ではありませんが、

なにをおっしゃるうさぎさん、
上戸もいいとこでは。

> 入社当時は、日本橋のど真ん中にも、その手の酒屋がありました。

そ、それですたい。

> 女性が居る店へ行く前の下地作りに、よく行きましたよ。

なるほどね。
遊人の吾喰楽さんらしい。

初めて知りました

ジオさん~角打ちは初めて知りました。
お酒を飲む人にとって、魅力があるのですね。
私は飲まないけど、乾き物をくわえてはチビチビやり、そうしてるうちに隣の客と言葉を交わし、意気投合というのは、何となくわかります。
それにルールも、いいですね!
これで美味しいお酒が飲めるのですね。

私の中のお酒を飲むイメージも、そんな感じです。
奇麗なお姉さんがいる所で飲むよりも、男らしいかも?

No title

角打ち?
将棋かな
豆腐かな
と思えば
酒でしたか

Re: 初めて知りました

まこさん、
こんにちは。

> ジオさん~角打ちは初めて知りました。

そうですか?

> 私は飲まないけど・・・・・何となくわかります。

へぇ~、下戸ですか?
少し飲めそうな感じですが・・・・

> 私の中のお酒を飲むイメージも、そんな感じです。

はい、まこさんの前では
おとなしく呑むようにします。

Re: No title

rippleさん
こんにちは。

はぁ~、そうきますか。
角抜きではありません。
やはりご存知なかったようで。
確かrippleさんは
下戸ではないですが
お飲みにならないと聞いています。
酒飲みの馬鹿な話など相手になさらないでください。

最近、知りました

北九州が語源なんですか?
ウォーキング仲間の下関の飲んべえさんから言葉の意味をご伝授してもらったところです。
下戸は人生の半分を損しているそうですね?
無念です(*^^*)

Re: 最近、知りました

みかんさん、
お久しぶりです。
復活されて、読み逃げしてます。

> ウォーキング仲間の下関の飲んべえさんから言葉の意味をご伝授してもらったところです。

そうでしたか。
はじめてでしたか。

> 下戸は人生の半分を損しているそうですね?
> 無念です(*^^*)

無念ということはないです。
下戸の方が失敗もないですから。
酒飲みはやっかいですから
あまりつきあわない方がよろしいかも。
反省の弁です。
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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