なぜ土石流の被害は繰り返されるのか






 長野県南木曽の梨子沢上流において土石流が発生し、流末の家屋を押し流して犠牲者が出た。この地区は3年前にも、さらにそれより以前からも土石流が繰り返し発生している。この地区には、土石流の兆候を刻んだ石碑があるくらいである。にもかかわらず、過去の経験を活かすことができずに今回も痛ましい災害を被った。なぜ過去の経験が活かされていないのか、専門的立場から検証してみる。

 土石流は同じ流域で何度も繰り返されるもの。隣の沢で発生していないのに、なぜ梨子沢で土石流が繰り返されるか。それには訳がある。土石流を引き起こす特有な地形的素因や地質的素因が必ずあるはずである。






梨子沢



 梨子沢における最大の土石流発生要因は流域の形状にある。流域の上流域は扇子を広げたように広いのに対して、流末では絞り込まれた形状を形成する。つまり懐が深いのに口元が狭窄している。これをボトルネック型流域という。ボトルネック型流域においては、流域の上流では多量の雨水を幅広く受け止めるが、流末が狭窄しているため表流水も浸透水も容易に掃けない。このため上流域が飽和状態となって崩壊が発生する。崩壊した土砂は狭窄した流末で蓄積されるため、破壊したときに一気に土石流となる。言ってみれば、ストレス蓄積型発生機構ともいえる。

 土石流が繰り返される流域の多くがこのボトルネック型流域である。無論、地質的要因とか雨の降りようとか、さまざまな要因が重なって土石流が発生している訳であるが、一義的には流域の形状によって危険度が算出できる。例えば流末の流域幅に対する流域面積が大きければ大きいほど土石流が発生する危険性があるわけで、そのような流域を抽出して優先して対策することも必要である。残念ながら、私の知る限りでは今のところそのような試みはない。

 それでも土石流は起きるもの。では、土石流に対する対策は万全であったのか。梨子沢においても砂防堰堤などの対策が講じられている。ただ最も肝心なのは、流末の対策である。土石流は上流からの勢いでもって直線的に流れる。梨子沢の流末は曲がりくねった流路工が設けられている。土石流はそれには関係なく直線的に拡散して右岸側の民家を襲った。




土石流



 砂防堰堤などの力で抑える対策も必要だが、土石流は発生するという前提に立って、まずすべきは土石流が速やかに木曽川に流下するよう直線的な流路を確保することである。それを言うと、土地所有権など民法的に無理だとかいう反論がでる。しかしこと人命に関わること。土地区画整理など国の法律によってどうにでもなることではないか。要するに、土石流の被害を繰り返さない真剣さがあるのかを問いたい。



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仰る通りです

>要するに、土石流の被害を繰り返さない真剣さがあるのかを問いたい。

小生、長野県の上高地で中部地整が行った砂防ダムを見学しました。
大した規模の物でしたが、あれだけの設備ても土石流は防げないと見ました。
仰るとおりに直線的に流れ下る道を作ることが、最適の事故防止手段だと思います。
それにしても、数年も経てば人家が建つのでしょう。

Re: 仰る通りです

呑兵衛あな さま
台風が過ぎたら
蒸しますね。

> 小生、長野県の上高地で中部地整が行った砂防ダムを見学しました。
> 大した規模の物でしたが、あれだけの設備ても土石流は防げないと見ました。

ほほう、長野県の砂防ダム見学されましたか。
長野県は有数の砂防ダム銀座です。

> それにしても、数年も経てば人家が建つのでしょう。

そこですよ、問題は。
結局は自己責任です。
災害が来るとわかっているのに
またそこに戻る。
東北の震災だってそうです。
過去の経験を活かすことができない
人間の煩悩です。

No title

トラックバックさせていただきました。
しかし、「管理人の承認後に表示されます」とのことです。
過去にもトラックバックさせていただきましたが、承認していただけないままになりました。
承認いただけない理由等を教えていただければ、向後改めたいと思いますので、よろしくお願いします。

Re: No title

呑兵衛あな さま

何か失礼をしているようですね。

トラックバック、
承認する方法がわかりません。
ご迷惑おかけします。

No title

geotech さま
>承認する方法がわかりません。
承知しました。
向後、貴ブログにはコメントさせていただきます(笑)

Re: No title

呑兵衛さま

今後ともごひいきに
よろしゅうお願いします。
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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