横浜マンション傾き騒動





 ニュースやワイドショーでこの騒動をとりあげ、専門家とおぼしきコメンテーターが勝手な発言をしている。全くわかっていない。そう憤慨しながら書かねばと思い立った。


【わかっていない理由】
 マンションなどの建築物を扱う技術者は、「上物(うわもの)」と呼ばれるマンションなどの建築物本体の設計に携わる技術者(一級建築士)と基礎を扱う技術者(技術士)に分かれる。一級建築士は難しい構造計算をこなせる構造屋としてのプライドがあり、技術士には構造屋は地盤のことなんかわかっちゃいないとのプライドがある。しかし社会の評価は一級建築士の方が高く、従ってこの種の問題が発生した場合は決まって一級建築士が登場する。しかし姉歯事件のように建築物の設計そのものに欠陥がある場合は論外として、一般にこの種の問題のほとんどは基礎にある。したがって、地盤や基礎に全く疎い一級建築士が登場しても、何もわかっていないのに生半可な発言をすることになる。


【原因の元凶】
 個別の問題の原因もさることながら、そもそもの元凶はゼネコン(総合建築会社)の内部組織の確執にある。どこのゼネコンにも設計を扱う「建築部」と基礎および周辺工事を担う「土木部」がある。前述した経緯から「建築部」は自分たちはエリートと自負し、「土木部」を見下げる。一方「土木部」にはコンプレックスがあるものの地盤情報が一番大切なことを自負している。こうして「建築部」と「土木部」の確執は営々と築かれ、その結果、「土木部」が提案・報告する地盤情報を無視して、「建築部」が上物を設計することが日常化している。建築土木に関連する誰しもが感じている古くて新しい問題点だが、未だに是正されていない。


【基礎地盤調査の問題点】
 力のある「建築部」としては安いマンションを建設することを目標にして、できるだけ基礎工事を抑制するよう「土木部」に指示する。その結果、省かれるのが基礎のボーリング調査となる。一般的にはマンションの四隅と中央の計5箇所のボーリング調査をするところを(下図)、対角線の2箇所で済ませたり、中央1箇所で済ませたりする。ましてや今回の事件の場合のように、既存の建物が隣にあればそのデータを使って新たに調査をしていない可能性が極めて高い。つまり基礎地盤の調査不足が原因であることに間違いはない。



基礎ボーリング調査配置



【支持層の認識】
 「建築部」の建築屋にとってはボーリング調査は1本のデータに過ぎない。その地盤の原地形、地層の凹凸、地形の成り立ちや地質の生い立ちなど眼中にない。したがって、支持層を示す1本のデータがあれば、その支持層は水平に連続して当たり前との認識しかない。そこで地盤情報の間違った認識がひとり歩きして大きなミスを起こす。




マンション支持層




 以上、土木屋寄りな見解のようであるが、社会の実態から原因をまとめたものです。建築と土木、工学と理学、臨床と基礎研究。昔から言われてきた分野の垣根の問題ですが、その境界領域を制覇しない限り、大きなミスはなくせないし、立派な成果も生まれない。そう信じて、今後も恐れずに境界領域に切り込んでいきます。プライドとか名誉とかクソくらえです。




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No title

こんにちは~
ご無沙汰をしております。

最近はネット徘徊もせず横着に拍車がかかっております。
こちらの訪問もひさかたぶりです。


建物に関する怪・・・
勉強になりました。

Re: No title

秋桜さん、
こんにちは。

> 最近はネット徘徊もせず横着に拍車がかかっております。

私の方はたまに徘徊して読み逃げしています。
しっくりこない空模様ですね。
洗濯物が乾かなくて。
主夫ならず主婦してます。

勉強になります

小生は、道路関係の土木を行っておりましたので、不動産業界の建築vs土木の関係に へぇ~ 物です。
続編を期待しています。

Re: 勉強になります

呑兵衛あな兄貴
いつもありがとうございます。

> 小生は、道路関係の土木を行っておりましたので・・・・・・・

そうでしたか。
では、ほとんど同じムジナってことですね。
よろしく。

兄貴の気骨あるブログを盗み見してます。
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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