死の淵にて



 私には6歳上の姉と3歳上の兄がいる。まだ私が高校生の頃、姉は極貧の生活から逃げるように嫁いだ。兄もまた、高校だけ出て逃げるように家を出て就職した。残された末っ子の私だけが極貧の館に人質のように取り残された。進学校に通っていたが大学進学はとっくに諦めていた。が、そこに姉と連れの義理兄が救いの手を差し伸べてくれた。そのお陰で大学に進学することができた。いわば、姉と連れの義理兄は命の恩人とも言える。

 その姉が再入院し、容態が思わしくないとの知らせを受けた。先天的な心臓欠陥に加えて肺炎を患い、自分の力で呼吸すらできない状態で一端は退院したものの、さらに悪化して再入院となり、すぐにICUに入ったという。駆けつけたときに既に意識はなく、ほとんど植物人間状態であった。

 今夜くらいが山ですとの医師の説明を冷静に聞くことができた。私としては、前回の入院時によく話をして別れを済ませたという思いがあるからだ。それでも愛おしくてやるせない。酸素が吸入される口元で「お姉さん、来たよ!お姉さん、来たよ!・・・・・・」と何度も叫んだ。すると、姉の目から大粒の涙が出た。

 それから、山口の病院と広島、片道2時間半の往復を毎日繰り返した。脳梗塞と腎臓病の合併症が加わり、心拍量150、血圧は上が40下が20の日々が続いた。私の娘が無鉄砲にも3歳の孫を連れて新幹線で病院に駆けつけたとき、血圧は測定不能まで低下していた。私の孫の小さな顔全体が塞がるほどのマスクを着用してICUに入って病床に寄り添ったその時、驚くことに、血圧が80まで回復したという。

 姉の一人娘は入院したその日に東京から駆けつけ、そのままずっと看護していた。姉の旦那とともにほとんど一睡もしない状態のふたりの看護は1週間近くで限界に来ていた。私の兄は娘が乳癌の手術をするので、その後の日程に気を揉んだ。私もまた落ち着いて仕事ができずに気を揉む日々が続いた。

 姉には孫の男の子ふたりがいる。その孫が東京から駆けつけた。そして孫たちが東京に戻ったその日の夜、思いを遂げたかのように、姉は息を引き取った。

 憔悴した姉の旦那に代わって会葬者への挨拶を行い、無事、葬儀を終え、昨日、帰ってきた。意識がなくても、あたかも周囲の言葉が聞こえているかのような反応や体の異変。あたかも死にどきを自身で決めているかのような最期。科学では到底、説明できない幻想的な死の淵を見た思いである。





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No title

ご愁傷様です。
今の時代、70歳とは少し早すぎるお迎えでしたね。
ご冥福を、お祈り致します。

意識がなくても、耳は聞こえているそうですよ。
妻の時も、看護師さんから、何か声をかけてと促されましたが、
声が引きつって何も喋れませんでした。

おねーさんの

ご冥福をお祈りします。

 人は最後まで耳は聞こえていると言いますね・・・
皆さんにお会いして心残りなく逝かれたことでしょう。
合掌!

No title

geotechさん  病気で兄姉を送葬する悲しみは辛いものです。
心からお悔やみ申し上げます。

仕舞仕度をしている私にも歳老いた姉が三人居ます。
ふっと、気になったときに何度でも会いに行くことにしています。


No title

geotechさん

母親代わりのようなお姉さまが
亡くなられたようですね

やさしお姉さまとの お別れは悲しいですね

お悔やみ申しあげます。

No title

geotechさん、この度はご愁傷様でした。
お姉さま、娘さんご夫婦やgeotechさん、近親者の方達に見守られた後、天国に行かれたのですね。
ご自身もその事を良く分かって…
私も常識では考えられない死の淵を見た事があります。
その時はやはり不思議な人間の繋がりや情を感じました。

お姉さまのご冥福を心からお祈りいたします。
geotechさんもお疲れが出ませんように。

Re: No title

吾喰楽さん
いつもいつもありがとうございます。
します。

> 意識がなくても、耳は聞こえているそうですよ。

そういいますが、誰が確認したのかと。

> 妻の時も、看護師さんから、何か声をかけてと促されましたが、
> 声が引きつって何も喋れませんでした。

そうですか、
最愛の妻の最期はそうかも知れないですね。
でも、奥さんは何にも喋れないあなたのことを、
らしいと思って安心されたと思います。

Re: おねーさんの

dorucasuさん、
お見舞いありがとうございます。

>人は最後まで耳は聞こえていると言いますね・・・

そう言われてますが、
それを証明するものはないのも事実。
何かまだ、生きてる人が知り得ない何かが
あるようでなりません。
お見舞い、ありがとうございます。

Re: No title

与作さん、
お見舞い、ありがとうございます。

> 仕舞仕度をしている私にも歳老いた姉が三人居ます。
> ふっと、気になったときに何度でも会いに行くことにしています。

貴兄のその振る舞い、尊敬します。
見習いたいです。

Re: No title

みのりさん、
お悔みのお言葉、
ありがとうございます。

> 母親代わりのようなお姉さまが
> 亡くなられたようですね

ええ、確かに母親のような存在でした。
その姉には倍返しで恩を返したつもりですが、
それでも悔いが。

Re: No title

neneさま、
お悔みと励ましのお言葉、
ありがとうございます。
いつも、コメなしでも
ブログを覗いていただいていることに
感謝しています。

ご愁傷様です

ジオさん~意識はなくともちゃんとお姉さんは分かっていたのじゃないでしょうか?
科学では説明できない・・・私もそう思います。

意識不明3ヶ月で亡くなった母を思い出しました。
やはり意識はなくとも、「母さん奇麗だよ~」と義兄が言ったひと言で微笑みました。
そばにいる者にとって、それだけが救いでした。
お姉さま、病は苦しかったでしょう。安らかに

Re: ご愁傷様です

まこさん、
おはようございます。
また少し暖かい日が続いてます。

> 科学では説明できない・・・私もそう思います。

なにか、不思議ですね。

> やはり意識はなくとも、「母さん奇麗だよ~」と義兄が言ったひと言で微笑みました。

そうですか。
そういうこと、あるんですね。
ごそごそと葬儀の段取りを話してたのも
聞こえてたのかしら。
ごめんなさい。

No title

たましいは
聴いている
知っている
思いは
届いている

そう信じています。

ご冥福をお祈り致します

ヒトの誕生や進化自体が、不思議です。
だから、ヒトには今の科学では、まだ解明できない
不思議な力が備わっているのではと思います。
意識はなくとも、家族,親族の皆さんが,懸命に
心を尽くして看護した事、きっと嬉しく思われた
事でしょう。
最愛のお姉さまのご逝去、心よりご冥福を
お祈り致します。
geoさん、お疲れでしょう。お体ご自愛下さい。

寂しくなりましたね。

お姉さまのご逝去
心からお悔やみ申し上げます。

夫の最期を思い出しました。
ずっと、ずっと何回も「ありがとう~」を言いました。
そしておつかれさま・・とも。

いずれこの世の別れは平等に訪れるのですね。

Re: No title

rippleさん、
こんにちは。
魂は聴いてますか?
そう信じたいのですが、
実際のところどうなんでしょ。

Re: ご冥福をお祈り致します

トパーズさん、
こんにちは。
昨日は奈良の与作さんと
お会いしました。

>ヒトには今の科学では、まだ解明できない
> 不思議な力が備わっているのではと思います。

近い将来、証明されるでしょうか。
でも証明されない方がいいかも知れませんね。
優しいコメント、ありがとうございます。

Re: 寂しくなりましたね。

秋桜さん、
おはようございます。
昨日はどうもです。
お変わりありませんね。

> ずっと、ずっと何回も「ありがとう~」を言いました。
> そしておつかれさま・・とも。

その言葉しかみつかりませんね。
「ありがとう」「おつかれさま」
いつでも素直に言える自分でありたいし、
素直に言える相手を作りたいものです。

お悔やみ申し上げます

遅ればせながら、心よりお悔やみ申し上げます。

きょうだい、というのは親とはまた違う繋がりに、分かち合うという言葉がぴったりの存在でしょうか。

親の死とは少し違う悲しみに思えます。
鼻の奥がツーンとしながら読ませていただきました。

言い尽くせない程の恩を頂いたお姉さまとのお別れに、さぞ
寂しい年の暮れかと思いますが、どうぞお力落としされませんように。
義兄様の晩年に、是非寄り添って差し上げて下さい、、、余計なことながら。

Re: お悔やみ申し上げます

ミルフィーユさん、
こんにちは。
悔やみと励ましのお言葉、ありがとうございます。

> 親の死とは少し違う悲しみに思えます。

確かに。少し違う悲しみのように思えます。

> 義兄様の晩年に、是非寄り添って差し上げて下さい、、、余計なことながら。

それが一番の問題なのです。

No title

心からお悔やみ申し上げます。

Re: No title

やまねこさん、
お悔やみのお言葉、ありがとうございます。
一昨日は大阪で盛り上がりました。
年内には上京かないません。
来年こそ会えればと思います。
残り少なくなりましたが、
麗しの彼女とお元気にお過ごされ
くださいませ。

No title

geoさん
私も遅ればせながらお悔やみ申し上げます。
ご愁傷さまでした。

そんな中 先日はオフ会でお会い出来
久しぶりにお元気な姿を拝見できて良かったです。
人生の残された時間は分りませんが
互いに精一杯生きましょうね。

Re: No title

チカちゃん、
こんにちは。

> ご愁傷さまでした。

ありがとう。
もう香典返しがなくなりました。
すみません。

先日のオフ会、
お疲れさまです。
元気そうなお姿を見て
安心しました。
それにしても、
みなさん、変わりませんね。

> 互いに精一杯生きましょうね。

はい、互いにね。
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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