父の日


 マンションに帰ると、郵便受けに宅配の不在伝票が入っていた。送り人は東京に住む息子だ。不在伝票に、“お荷物は宅配ボックスNo.3に入れています”と宅配業者のメモ。こんなときつくづく、マンションは便利だなぁと思う。早速、荷物を取り出して開けると、父の日のプレゼントであった。カラー裏地をチラりと魅せるカジュアルシャツだった。夜、お礼の電話をしたが出ないので、お礼のメールをしておいた。





父の日プレゼント




 父親と息子の関係は、ある時期を境に微妙な関係になる。それは、息子が父を越そうとする時期と重なる。その時期を境に、男同士の寡黙な戦いが始まる。息子はリトルリーグの野球少年であったが、キャッチボールする返球の速さが私を越すのに時間はかからなかった。このときが最初の父越えであったろう。しかし、正捕手である背番号2ののユニホームを勝ち得たものの、最後までレギュラーで試合に出場することはなかった。

 かわいそうなことを当時の監督もしてくれたものだと思うが、それも仕方なかろう。息子にとってそれは、やがては経験する人生の挫折の第一歩であったろう。それが原因かどうか、しばらく荒れた時期もあった。その都度、父と息子は真剣に生きることの議論をしてきた。大学時代はロン毛の茶髪でギターに没頭していた。真剣に生きてさえいればそれもよかろうと、応援もしてきた。そして幸いにも大学をなんとか卒業できて、今の職にある。大阪から東京に転勤して早10年が経とうか。彼は今の仕事が好きだと言う。そして、東京で頑張りたいとも言う。

 明け方、息子からのメールの返信が届いているのに気が付いた。「電話に出れずにごめん.今帰宅中です.」とある。返信時間を見ると、23時50分であった。日曜日の深夜まで仕事していたのか。そしてメールはこう綴る。「これからもお互い仕事人として頑張りましょう!でも無理はせんでね.」と。

 父のことを気遣いやがって。息子よ、たくましく成長したものだ。父は実は今日、マンションを留守にしていたのは、昔、野球の応援に行ったグランドを見に行ったのだ。背番号2でありながらレギュラー出場できなかった、あの忘れもしない悔しいグランドを眺めに。それも、偶然にも父の日に。

 1歳で父を亡くした私には戦う父も越す父もいなかった。それに引き換え、君には生涯現役を自負する父がここにある。戦う父、越す父がいるのは幸せなことだよ。父と息子の戦いはまだまだ続く。息子よ、手を抜くな!






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ジオさん  ジーンと来ました。
息子さんからの贈り物と心遣い、嬉しいですね。
深夜のメールで、離れていても優しい息子さんの気持ちが伝わりました。
親父を越すと言うよりも、親の背中を見て育ったのじゃないのでしょうか?・・・
そしてジオさんを目標にして、頑張っているのじゃないのでしょうか?
今も仕事が好きと言える息子さんは、立派です。

Re: 拍手

まこちゃん、
コメ早っ!

> 息子さんからの贈り物と心遣い、嬉しいですね。

ちょっと照れますが、正直、娘からとまた違う意味で嬉しいです。

> 親父を越すと言うよりも、親の背中を見て育ったのじゃないのでしょうか?・・・

前を見せてこなかったので、背中しか見えなかったのでしょう。

> 今も仕事が好きと言える息子さんは、立派です。

その点は感心してます。
親はなくとも子は育つと言いますが、
その通りです。

息子

僕には息子がいないから
geotechさんが羨ましいような気がします
男同士は全力でぶつかりあえますね

素敵なシャツの贈り物です
うちなんか、いつも靴下ばかり
でもって、靴下を贈った、贈ったって何度も言うわ

Re: 息子

ブルさん、
交通違反に赤字商売、
気をつけてくださいね。

> geotechさんが羨ましいような気がします

でしょう。男同士で酒飲むのもいいもんですよ。
あ、そっか、ブルさんお酒飲まないんだった。
じゃ、男同士でケーキ食べるのも・・・
ちょっと違うな。

> うちなんか、いつも靴下ばかり
> でもって、靴下を贈った、贈ったって何度も言うわ

そりゃ、ブルさんが穴があいた靴下を
いつまでも大事に履いてるからじゃ。
それに、女は恩着せがましいからね。

No title

こんにちは。

わが息子とも、似たような関係です。
最近、ようやく普通に会話ができるようになった感はありますが。
誕生日と父の日のプレゼントは、全て息子の嫁さんが段取りしているようです。
多分、息子が独り者だったら、何も送って来ないでしょう。

息子も酒は、段々、飲めるようになりましたが、まだまだですね。
負けるようになったら、吾喰楽も老いを感じると思います。

成長の過程 父よ 息子よ

ジオさま、こんにちは♪

何時もながらの軽妙な語り口 惹き込まれる文体
そしてしみじみと 分かる心理描写に涙ぐみました

>父親と息子の関係は、ある時期を境に微妙な関係になる。
>それは、息子が父を越そうとする時期と重なる。
>その時期を境に、男同士の寡黙な戦いが始まる

心理学用語で「母殺し」「父殺し」という言葉があります。
実際に殺しちゃったら「どもならん」ですがね〜〜(爆)
これが上手くいかないと 子供はいつまでも自立出来ずの
プー太郎 イカンねぇ(笑)その為に 親は時に立ちはだかり
逃げず 媚びず 真っ正面から 子供と対峙する必要があるようです
これが難しい けれど 子育ての終わった今 懐かしく思い出します

素晴らしい記事 拝読致しました。
いつも有り難うございます!!




Re: No title

吾喰楽さん、
こんにちは。
カラ梅雨の嫌な季節ですねぇ。

> 最近、ようやく普通に会話ができるようになった感はありますが。

そうですか。似たようなものですね。

> 誕生日と父の日のプレゼントは、全て息子の嫁さんが段取りしているようです。
> 多分、息子が独り者だったら、何も送って来ないでしょう。

わが息子は独身ですが、だったら立派な方ですね。

> 息子も酒は、段々、飲めるようになりましたが、まだまだですね。
> 負けるようになったら、吾喰楽も老いを感じると思います。

わが家は息子も娘も酒豪です。
親に似て困ったものです。

Re: 成長の過程 父よ 息子よ

ミー子さん、
こんにちは~(^^)
いつも格別の評価をいただいて、
無能な本人、恐縮してます。

> 心理学用語で「母殺し」「父殺し」という言葉があります。

そういう用語があるんですか。
「鬼殺し」は知ってますが。
あ、すみません。日本酒です。
どういう意味なのか、また機会があれば教えてくだされ。
母と娘の関係、父と息子の関係、掘り下げて考えていけば、
面白いですね。

No title

息子さんからのおしゃれな贈り物、うれしいですね。
父と息子・・・
この言葉には今、羨望があります。

夫は息子が生まれたとき、一緒にお酒を飲める日が
来ることを待ち望んでいました。
もともとそんなに飲める方ではないのですが
居酒屋などで好きな肴で、酒を酌み交わすことができる
息子の存在・・・というのが嬉しかったのでしょう。

でも、ついに二人で酒を酌み交わすということも
ないまま、旅立ってしまいました。

母の日は嫁がえらんでくれたプレゼントを贈ってくれますが
いま親父がいたら、どんな贈り物をしてくれただろうか、と
思います。

月命日には欠かさずビールをそなえ
好きだった銘柄のタバコに火をつけ
語りかけながら、あの世の父に吸わせていますよ。

ジオさん、たったひとりの息子さんと
これからも大切な心の交流ができたらいいですね。

今日のジオさんの文章は秀逸でした。

Re: No title

しあわせさがしさん、
こんばんは。

多分、ご主人、亡くなるときに
無論、貴女のことを案じたと
思いますが、
もっと案じたのは息子さんのことではないかと。

男として自立できるのか、
妻をめとって、一家、一族を継承できるのか、
口惜しい限りの思いが
くちなしの花にこめられていたと思います。

でも大丈夫でしょう。
飲めないオヤジの仏壇にビールを
たむけて一緒に飲んで、
好きな煙草をささげる息子さんに、
オヤジは微笑んでいますよ。
よ~く成長したなって。
そして、ここまで成長させた貴女に
涙して感謝してますよ。
きっと、きっと。

No title

いい親子関係ですね。
女の子は記念日にプレゼントなどよく気が付きますが
男の子は照れもあってか、知らん顔と聞きますよ。

良く育った息子さん。
育てた父が偉かった\(^o^)/

Re: No title

みかんさん、
おはようございます。

> いい親子関係ですね。

そうでもないですが、
いろいろあって今日に至ってます。
ただ、一緒に飲めるのはいい関係なんでしょうね。

No title

数カ月ぶりにシニア・ナビを覗きました。

いいお話ですね。

言葉がありません。

geotechさんの感無量のお顔(お会いしたこともないのに)が目に浮かぶようです。

親がなくとも子は育つ。

いいえ、geotechさんがいてこその息子さんです。


追伸:久しぶりに覗いてみると、しあわせさがしさんも復活なさっているようで、ほとんど関わっていない自分ですのに嬉しかったです。

Re: No title

夕里子さん、
シニア・ナビではほんとお久しぶりです。
FBではいつもお見かけしてますが。
最近は占いが流行ってるようですね(^^)

> 親がなくとも子は育つ。

ほんと、そのとおりです。

> 追伸:久しぶりに覗いてみると、しあわせさがしさんも復活なさっているようで、ほとんど関わっていない自分ですのに嬉しかったです。

ええ、「秋桜」というお名前でdebutされてます。
よかったら覗いてみてあげてください。

No title

ご無沙汰です。


いつの時代も変わらない、
何処の家庭でも有りそうな、
特別ではい父と息子の一日の話なのに
胸が熱くなりました。。。

私が映画監督なら映画の1シーンに使いたい!!


Re: No title

maiさん、
ほんと、お久しぶりです。
ブログの更新もないので、
心配してました。

> 私が映画監督なら映画の1シーンに使いたい!!

でも、ほとんど一人芝居ですね。

親子の姿が見えます

父親って普段は地味なものです。
歳重ねる度、子ども達は遠くに旅立って行くように思います。

「父の日」は子ども達が父の存在を暖かく振り返えってくれる日なのでしょうね。
ほんわかとしたお話し有り難うございました。

Re: 親子の姿が見えます

与作さん、
おはようございます。

> 歳重ねる度、子ども達は遠くに旅立って行くように思います。

成人したとき既に旅立って行っているのかも知れません。
子離れ親離れした近くて遠い親子関係でいたいものです。

プロフィール

geotech

Author:geotech
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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