トンネル崩落事故原因


 中央道・笹子トンネルでトンネル崩落事故が起きた。天井つり金具のボルト脱落したもので、今のところ金具コンクリートの老朽化が原因とされている。果たしてそうであろうか。非常に疑問に思う。

 いずれ事故調査委員会が発足するであろうが、いつものように、恣意的な人選と事実の隠蔽が懸念される。トンネルの調査・施工・検査に長年携わってきた者として、本件事故原因について現在知り得る情報から語る。

(1)  構造的な欠陥

 つり天井式のトンネルは排ガス規制以前の構造である。天井裏に送気と排気を連続して設けるための構造である。排ガス規制以降は排気ガスの質と量の改善によって喚気はトンネル延長数100mに1ケ程度の割合で天井にファンを設けるだけでよくなっている。長いトンネルを走行しているときに天井の所々に細長い気球みたいなものがあると思うが、それが喚気ファンである。

 問題はつり天井式の構造である。ボルトはたかだか長さ16cm程度コンクリートに根入れしてあるだけである。天版はコンクリートとボルトの周面摩擦力だけで支えられている。それも鉛直方向だから弱い。なぜボルトが切れても両側の梁で支える構造にしていなかったのか。構造のそもそも論がでてきそうである。

(2)  犯人はボルトではなくコンクリートの可能性が大

 中央道・笹子トンネルは1977年の開通であり、まさに高度成長期に建設されている。高度成長期の建設材料の品質は劣悪であり、とくにコンクリートの品質が悪い。その原因は、山砂の調達不足によってコンクリートに山砂ではなく海砂を使用していることにある。

 海砂に含まれる塩分と大気中の二酸化炭素が反応して、中性化反応という劣化現象が発生する。この年代に建造されたコンクリート構造物の多くに中性化による劣化現象が認められている。最近よく目にする橋桁の補強工事はコンクリート劣化に対する工事である。トンネルの天井コンクリートの劣化については見過ごされているのが実態である。

(3)  トンネルの錯綜

 中央道・笹子トンネルの周辺には中央本線・笹子トンネルや国道20号新笹子トンネルなどトンネルが錯綜して交差している。トンネルは岩盤の中の空洞であり、掘削して空洞を設けると岩盤の緩みが周辺に及ぶ。空洞が近接して複数あると、岩盤緩みの干渉作用によって緩みは助長される。


修正笹子
(図はマピオンから引用・編集)


(4)  老朽と疲労

 コンクリートもボルトも時間の経過とともに老朽化する。また、応力の長期化によって疲労が加わる。飛行機事故のとき耳にしたことがあるであろう金属疲労である。老朽と疲労は設計荷重以上のものが加えられた場合に加速度的に早まる。今、ボルトという材料にばかり着目しているが、周辺岩盤からの地圧や水圧がボルトやコンクリートに加わっていたと考えられる。1箇所のボルトではなく連続して落下した事実がこのことを示唆する。

(5)  発注事情

 事故が発生した箇所周辺は地質の状態が相当に悪かったという情報がある。しかし、仮に調査段階において局所的な地質の不良箇所が明らかにされたとしても設計に反映されないことが多い。さらに設計から施工への反映もされないことが多い。これらはトンネルの調査から工事までの発注システムに起因するところが大きい。





トンネル発注
(土木学会編・著者執筆「よりよい山岳トンネルの事前調査・事前設計に向けて」より引用)



(6) メンテナンス

 公共事業削減の余波はメンテナンス費用の大幅な削減を招いている。トンネル点検業務を好んで受注する会社はないほど単価が安い。目視観察と打音調査もままならない状況である。まして天井裏の高い位置の接着部は見るような仕様になっていない。




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No title

geoさん
こんばんは。

いつも当たり前に通っている道路やトンネルが
実は多くの工程を経て作られている事を思い知りました。
ただ それぞれが都合よく
やっつけ仕事をされたら予後は悪いに決まっていますネ。
この教訓が生かされるよう切に願います。

またまた・・・

予想される事故が起きましたね。
いまの企業や社会全体の危機意識のなさに起因するように思います。
諸々結果と原因が取りざたされていますが非常に甘いと考えます。

東電のことも人災。
今回も当然劣化が予測され手をこまねいた結果です。
リカバリーには莫大な経費がかかります。
手をこまねく前にきちんとした「仕事」をやるほうが
はるかに理にかなう経営だと思うのですが・・・


Re: No title

チカさん、
こんばんは。

> やっつけ仕事をされたら予後は悪いに決まっていますネ。

やっつけ工事は確かにあります。
問題は、究極の致命的問題を指摘する
エンジニアが現場に入る金もゆとりもないことです。

そんなこと、チカさんにぶつけても仕方ないんですが。

Re: またまた・・・

あらら、チカさんの1分後のコメ、
ありがとうございます。

> 予想される事故が起きましたね。
> いまの企業や社会全体の危機意識のなさに起因するように思います。
> 諸々結果と原因が取りざたされていますが非常に甘いと考えます。

究極のところ何が問題なのかというと、
国のあり方です。
発注の仕方、官民癒着、官尊民卑の考え方などもろもろです。
そういう意味では国のあり方を変えるという政策自体は
正解なのですが、どこまで本気でどういうシナリオか
見えません。

> はるかに理にかなう経営だと思うのですが・・・

そうですね。理にかなう経営すなわち政策を提示してもらいたいです。

No title

色々な問題を抱えているのですね。
正直なところ、技術的なことは、よく分かりません。
でも、垂直のボルトで重力を支えるのは、余り良いことではないのは理解できます。
何れにせよ、突然の事故で亡くなられた方や、御遺族がお気の毒でなりません。
数十年前の一時期、週に何度もこのトンネルを利用していたので、感慨深いものがあります。
事故の直後、中日本の社長が、テレビで他人事のような顔をしていたのが気になりました。
誰かに云われたのか、その後、少し変わりましたが。

No title

上にあるものは
いつかは落ちる
素人目にも
設計ミスだろうと
想像がつく

Re: No title

吾喰楽さん、
こんばんは。

> でも、垂直のボルトで重力を支えるのは、余り良いことではないのは理解できます。

そりゃ、素人でもわかりますよね。

> 数十年前の一時期、週に何度もこのトンネルを利用していたので、感慨深いものがあります。

そうなんですか。

> 事故の直後、中日本の社長が、テレビで他人事のような顔をしていたのが気になりました。

NEXCOは実質、民営化してませんから。

Re: No title

rippleさん、
こんばんは。

> 上にあるものは
> いつかは落ちる
> 素人目にも
> 設計ミスだろうと
> 想像がつく

あくまでも五行歌ですね。
そう。誰しもそう思うテでしょうね。
裁判沙汰になりそうですね。
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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