禁固刑6年の波紋




 イタリアの地震学者に有罪判決が下された。地震予知に関して専門家が間違った判断をしたとして、求刑を上回る禁固刑6年という厳しい有罪判決が下されたものである。ことの概要は以下のとおりである。

 2009年、イタリア中部・ラクイラで大地震が発生して309人の死者を出したが、その数ケ月前から小規模な地震が多発していた。そのため、大規模な地震につながる可能性を検討する地震予知専門家会合が開かれた。その結果、短期的には大きな地震は起きそうもないという見解が示され、住民たちを安心させた。それから1週間後に大地震が発生した。

 今回の判決は地震予知の責任を問うものではなく、多発する群発地震に対する十分な分析が行われなかったこと、そして専門家が知り得ていた情報を住民に十分に伝達していなかった責任を問うものであるという。しかしどのように理屈づけようが、結局は地震予知の責任が問われたことになり、現に、禁固刑の判決が下ったのである。

 このニュースを聞いて、私はある意味、してやったりと思う反面、危険予知判断の公表の難しさを改めて思うものである。

 3.11以降、将来の地震予知に関する地震学者の発言には、ほとほと辟易している。有史以降100年~300年周期で発生しているので20~30年の間に大規模地震が発生してもおかしくない、という類の発言である。呆れているのは、明確な理由や論拠を示していないこと、微塵も責任と覚悟も感じられないほどの軽々しい発言であることである。それは、予知とはほど遠いおとぎ話かギャンブルの世界である。

 同じ科学技術に身を置く民間の立場でいうと、地震に限らず地すべり崩壊や落石の危険性においても、このようなリスク判断の発言には厳格な理由と論拠が求められる。そして、その結果責任は個人も会社もそれこそ命運を賭ける。だからこそ、一層、慎重になる。ただの一過性の発言では済まされない。慎重に一言一句をしたためた文として残される。

 民間は国から金を貰っているから、仕方ないといえば仕方ない。しかし地震予知を軽々に論じる大学教授も専門家も、国民から金を貰っている身である。違うのは、誰誰に食わせてもらっているという認識があるかないか、しょうもない誇り高きプライドがあるかなきかである。

 そういう意味で、今回のニュースは人間の生命に関わる軽々しい発言を戒めるものとして歓迎したい。しかしそこで私が引っかかるのは、問題になっている地震学者の見解が大地震は起きそうにないという内容であるからである。

 コンサルタント時代の若きころから教わったことがある。危険側に言っておけばよいと。危険サイドに言っておけば、実際に災害が発生したら、そら言ったことかと自慢できる。仮に災害が起きなくても誰も文句は言わない。要するに、逃げを打てと。正確な情報から分析して危険でないと判断され、そのまま正直に言った場合はどうだろう。万一、災害が発生でもしたら、イタリアののように袋叩きに合うだろう。

 古来、学者は災害に関して危険側に危険側に物申す習性を身につけた。いざ事が起きた場合の保険であり、わが身がかわいいからでもある。人の生命に直接関わらない諸問題においてもその習性は拭いきれない。そんな中で、起きない、発生しない、大丈夫という発言は非常に勇気がいることだ。

 もし仮に、学者や専門家が過去の習性を守り狼少年と化したらどうだろう。万一の危険に対する備えを通り越し、景一の危険に人類は備えることになる。世界の財政破綻を招くばかりか、科学技術の発展はおぼつかないであろう。危険と安全の境界領域を極めることが防災技術の発展に繋がる。その意味で、この件を契機に心ある学者や専門家の真実が隠されようものなら悲しむべきでもある。

 いずれにしても、自然界とは地震予知とはほど遠い無知の世界であることを、学者や専門家はよく反省し、仮に判断するとなればその論拠と仮定条件、精度と適用性を明確にすべきである。





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No title

6年の禁固刑という厳しい有罪判決のニュースを
見て、日本だったら有り得ないなと即座に思いました。

Re: No title

トパーズさん、
おはよう!

今朝は随分と冷えましたよ。
NYもそろそろ紅葉では。

> 6年の禁固刑・・・・・日本だったら有り得ない

確かに、あり得ないですね。
そんだけ、日本は「まったり」ぬるま湯なのでしょう。
言葉の責任の重さを知らせしむ上でいいことだと。
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