「くちなしの花」に寄せて


 「くちなしの花」は梅雨時にお似合いの可憐な白い花であるが、同時に、渋い声で歌う渡哲也の同名の歌としても世に知られる。その「くちなしの花」にちなんで、過日、シニア・ナビのSさんが亡き夫のことを偲んだ思い出をブログに綴られていた。その内容はあまりに衝撃的なものであった。

 渡哲也と声質が似た渋い声で「くちなしの花」をさらりと上手に歌っていたというSさんの夫君は、闘病生活20年余りを経てあの世に召されたという。もう10年近くも前のことである。その亡き夫との闘病生活の思い出について、薬害とくに向精神薬の弊害に着目して記している。



くちなし


 医師や病院への不信を抱く中、薬害による恐ろしいまでの重篤な副作用に見舞われた夫。副作用によって凶暴となり、暴言を吐くまでに豹変した夫を救うために、それこそ、わが身を削るほどの献身的な戦いをしてこられた様子が、ひしひしと伝わってくる。Sさんはその思い出を、それこそ人事のようにさらりと綴っておられた。

 このブログに対して、同じく薬害によって苦しんだ方、同じように夫を闘病生活の末に失った方、ある日突然に夫に先立たれた方など、多くのシニア女子が共鳴したコメントを寄せていた。そのどれもが衝撃的な内容であったが、とりわけ、夫の最期のときを自らの苦渋の決断で看取ったMさんのコメントは、生々しいものであった。

 夫の死を前にして最大の努力と最善の手段を講じたとしても、死という現実のもとでは、どうしても悔いが残るのは、至極、当然であろう。その悔いは、時間が経ったからといって決して忘れることができるものではなく、一生引きずることにもなる。赤裸々に身内のことを語っているSさんやMさんではあるが、それ以上の語れぬ修羅場を経験しているであろうことは、文体の奥から容易に想像できる。

 SさんやMさんはじめ、シニア・ナビには寡婦になられた方が多い。しかし、彼女らは共通して今のこのときをハツラツと生きている。無論、表面には出さない悲しみを抱えてのことであり、他人には言えぬ悩みを持ってのこととは思うが。しかしそれでも、趣味や仕事、仲間との交流を通じて、できるだけ楽しく生きようと懸命である。その姿に感銘し、敬服するばかりであり、夫に代わって彼女らに感謝状を贈りたい気持ちで一杯である。彼女らの夫君は今のハツラツした姿を天国から見下ろし、さぞやほくそ笑んでいることと思う。

 そのような強いシニア女子を見て思う。それにひきかえ、何と男どもの女々しいことよ、と。人生に少し躓いただけで世を怨み嘆き、妻に先立たれると立ち上がれないでいる寡夫の多いこと。積極的に趣味や人間交流に参加することに躊躇しているシニア男子の多いことよ。シニア女子の割り切り力、回復力、転換力は見事であり、そのどれをとっても男子は女子に劣る。これは、男女の先天的な能力の違いというよりも、彼女らには幾多の修羅場を全力で戦ってきたという自負があるからではなかろうか。その修羅場とは、仕事における男のそれとは性質を異にし、実践的な生身の修羅場なのである。もっと言うならば、出産そのものが修羅場の第一歩といえよう。

 もうひとつ思うことがある。それは夫婦の価値観、あるいは人間としての価値観についてである。闘病と看病の中、死ぬか生きるかの修羅場を、ともに戦友として戦ってきた夫婦である。片や、ともに老後長く生き延びたものの最後まで意志が通わぬ夫婦がいたとする。どちらが夫婦としての価値があるのか、どちらがほんとうに幸せなのか。答えは明白である。夫婦や友だち関係、親子関係などの人間関係を、人生の中でどれだけ真剣に育んできたのか。趣味や仕事や恋にどれだけ真剣に取り組んできたのか。それによって人の価値が決まるような気がする。問題は、そうした人生経験の長さではなく、そのときどきの真剣さではなかろうか。










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こんばんわ

よれよれのボツイチです。

目の前に居ないってことは欠点も、もう見えませんねぇ~
しかも、いいとこばっかり思い出して、
しみじみあれ程の良い男はいないと思わせますから、
まったく迷惑なヤツです。

私が生き生きしている事が、
亡夫の喜ぶ事だと思っています。

のこり夫を越える男性に会うことを目標に(*^_^*)
くやしかったら化けて出てこ~~い♪
お化けも夫ならぜんぜん怖くない。

仕事柄、介護で疲れ果てたご夫婦も見ます。
大げんかされていても、憎しみあっているようにみえても
片方が入所や亡くなる事態になると
かけがえのな無二の関係だったのだと、
本来の姿が分かることばかりです。

介護の愚痴は話半分に聞くことにしてます。
苦痛にみえても
お世話する事がまたその方の生きがいである事もありますし。

夫の死から、いつか人は死ぬ事を学習。
人生一夜の夢?
そんな気もしています。

夫婦って元他人なのに摩訶不思議。摩訶不思議。

そうそう、男性にできない出産と育児ですが、
子を守る本能、
これが環境順応能力を高めているのかもしれません。

運命受動態に女性は出来ているのかも?

こんばんは~

ふっと夜中に目が覚めました。
布団の中でまた小説の続きを読んでいたのですが・・・

みかんさんと同じく、またジオさんが言われているように
生きている者が楽しくしあわせに暮らすことが
逝った人にとって一番の供養だと思っています。
わが夫もそれを望んでいました。

闘病や家族の中に何らかの苦悩を抱えていると
そのことが家族のきずなを一層強くします。
かけがえのない家族ですね。

今は、紙切れ一枚で相手を見限る夫婦も
いるようですが・・・

お久しぶりです・・

いつも読ませていただいています。

 本当に皆さんのブログで私も助けられています。
今まで自分のことしか分からなかった。「何でこんな目に・・」と思ってきましたが「アア いなくなったら どうだろう」と考えるようになりました。感謝!

No title

夫に先立たれた妻は
すぐに元気になり
妻に先立たれた夫は
いよいよ弱る
これが世の常

いざとなると女性は本当にすごいと思います。

No title

今回のテーマは私にとっては耳が痛いというか・・・夫婦って本当はどんなものなのか判ってないかも・・・

離婚して10年・・・3人の子供が出来て10年も経たない頃から外に好きな人(家庭を持った方でした)があり、家庭においては女一人で会社と家をきりもりして来た姑との25年近くの生活は未熟な私には地獄に近いものでした

子供たちが両方が幸せになって欲しい・・・そんな言葉から離婚を決心しました  遅い離婚です  結果的には約束した事は守られず今に至ります

最後までお互いの存在を認め合って生きて行くって本当は有りなんですよね  つつましく二人で生きていく人生に憧れますね

どちらかの死を看取る事が出来る・・・・おそらく大変な苦労を伴うのでしょうが、それでもそれがどんなに心強い事かと想像されます

時々そんな思いが頭を過ぎりますが結局は無い物ねだりをしないで自分をしっかり生きようと思い直して毎日を過ごしてます    

まだ遅くはない! (ほんとかなあ~)  お互いを理解しあえる人と巡り合うかも知れない!・・・と思いたい・・・・・。  

ちょっと違うかもしれないけれどどちらにしても女性は独りでも生きていけるのです
結構しっかりと・・・・


 

No title

ジオさん
お疲れサンです。
まったく暑い日々ですな。
想像ですが どちらかが病気を得て
真剣に向き合うことが始まるのではないでしょうか?
そして
本物の夫婦が出来上がるような気がします。
だから寡婦には達成感があるのかも知れません。
我が家の場合 
無傷で逝きましたからルンルンで若い女と暮らしているはず。
今逝っても そんな婆さん知らネと言うに決まっていますww
自由な時間に慣れたら もう戻りたいとは思わない・・
そんなこと言うのは私だけ?
やっぱ強いわ~~~





Re: こんばんわ

みかんさん、
おはよ!
早朝ウオーキングの後です。

> よれよれのボツイチです。

よれよれですか?
まだまだよれてませんよ。

> しみじみあれ程の良い男はいないと思わせますから、
> まったく迷惑なヤツです。

いや~、言ってくれるじゃないっすか。
ごちそうさまです。

> 私が生き生きしている事が、
> 亡夫の喜ぶ事だと思っています。

そのとおり!

> のこり夫を越える男性に会うことを目標に(*^_^*)

残念ながらいないとおもいますよ。

> お世話する事がまたその方の生きがいである事もありますし。

みかんさん、天職ですよ。

Re: こんばんは~

しあわせさがしさん、
おはよ!
最近、よく大阪(宝塚界隈)を俳諧しています。

> 生きている者が楽しくしあわせに暮らすことが
> 逝った人にとって一番の供養だと思っています。
> わが夫もそれを望んでいました。

結局のところ、そうだと思います。

> 闘病や家族の中に何らかの苦悩を抱えていると
> そのことが家族のきずなを一層強くします。

言われるとおりです。
苦悩や苦境があってほんとうに結ばれるものだと
実感します。
楽しいだけのいい時代には何も考えていませんでした。

Re: お久しぶりです・・

dorucasuさん、
お久しぶりです。

> いつも読ませていただいています。

私もときどき読み逃げしてます。
それと、皆さんのブログに小まめにコメされていて、
マメなのに感心しています。

>「何でこんな目に・・」と思ってきましたが「アア いなくなったら どうだろう」と考えるようになりました。感謝!

そうですか。
こんな〇〇でも、いるだけマシってことですか。
もう悟りの域に達したのでは。

Re: No title

rippleさん、
お元気そうで何よりです。

> 夫に先立たれた妻は
> すぐに元気になり
> 妻に先立たれた夫は
> いよいよ弱る

いや~、これ定説ですね。
女は強しですね。

Re: No title

さくら子。。さん、
おはようございます。

> 離婚して10年・・・

そうでしたか。
また別の意味の赤裸々話を聞きました。
ありがとうございます。

>結果的には約束した事は守られず今に至ります

別れるときの約束事、守られてことが少ないですね。

>つつましく二人で生きていく人生に憧れますね
・・・・おそらく大変な苦労を伴うのでしょうが、それでもそれがどんなに心強い事かと想像されます

それでもふたりの方がはるかにいいと思います。

> まだ遅くはない! (ほんとかなあ~)  お互いを理解しあえる人と巡り合うかも知れない!・・・と思いたい・・・・・。  

まだまだ遅くないですよ。
文章にハリがありますから、
きっと心にもハリがあるはずですよ。
いい人に巡り会えたらいいですね。  

Re: No title

チカさん、

> まったく暑い日々ですな。

まったく暑いです。
昨日は大阪の現場で死にそうでした。

> 想像ですが どちらかが病気を得て
> 真剣に向き合うことが始まるのではないでしょうか?

まったくそのとおりだと、私も思います。
 
> 無傷で逝きましたからルンルンで若い女と暮らしているはず。
> 今逝っても そんな婆さん知らネと言うに決まっていますww

そんなことはありませんよ。
夫になりかわり反論します。

> 自由な時間に慣れたら もう戻りたいとは思わない・・
> そんなこと言うのは私だけ?
> やっぱ強いわ~~~

やっぱり、強いわ~
少し無理しているところもありますが。

No title

色々皆さんの読ませていただきました 私も
最近までは全くの幸せ者と思っていました
仕事も女が手伝えませんから 家で安気に子育てやら
友達とお茶 主人はそれを見守ってくれていました
その主人が5年前心臓の手術しまして元が丈夫でしたから
良かったです 身体障碍者になって何処に行くのも一緒で
他人からは仲良しですねと羨ましがられましたけれど
ついていないと駄目なの それに 此処段々ボケが入って
認知症になるかと心配もあります 今まであんなに幸せにさせてもらったから これからはまあみてあげてなるべく主人が恥かかないようにと
心がけています でもひとりより二人の方がいいわ

Re: No title

喜美さん、こんにちは。

>身体障碍者になって何処に行くのも一緒で
> ついていないと駄目なの それに 此処段々ボケが入って
> 認知症になるかと心配もあります

そうだったんですか。
それで、夜は空けられないのですね。
昼間だったら何とかなっても。

どうぞ、これからはご主人のことをお願いします。
ただ、それだけで喜美さんの自由がすべて束縛される
のには、私は反対です。
私が体が不自由になっても、相手のことを思えば、
そう思うと思います。
人間、ほんとうにしあわせなときは、
しあわせを実感しないものでしょうね。
ごく普通のありふれた安らぎが極上のしあわせであることを。

No title

おはようございます。

クチナシの花
素敵なかおりでとても好きな花です。~~♪

渡 哲也の”クチナシの花”も大好きです。~~♪

Re: No title

みのりさん、
こんばんは。
遅くなりました。

> 素敵なかおりでとても好きな花です。~~♪

そうですか?

> 渡 哲也の”クチナシの花”も大好きです。~~♪

あんな渋い声は出ませんが、
ときどきギターで歌ってます。

確かに強い

僕は×一ですから、夫婦のことは何も言えませんが
団地でも片方が亡くなられた夫婦は多いです
確かに女性のほうが強い

夫に先立たれた女性はほとんどの人が見違えるようにハツラツと生きている
反対に妻に先立たれた男性はほとんどの人が惨めである
まず、料理、洗濯をしたことがない男性が多いので
いつも弁当を買ったり、いつも同じ服を着ている
やはり、女性の方が強い

・・・料理ができない、洗濯ができない
あっ!俺も同じだ!

Re: 確かに強い

ブルさん、こんばんは。

> 僕は×一ですから、夫婦のことは何も言えませんが

どうしてですか?
バツイチは失敗の鑑ですよ。

> 反対に妻に先立たれた男性はほとんどの人が惨めである
> まず、料理、洗濯をしたことがない男性が多いので
> いつも弁当を買ったり、いつも同じ服を着ている
> やはり、女性の方が強い

やはりそうですか。

> ・・・料理ができない、洗濯ができない

洗濯できなくても、人生の選択ができてるじゃないですか。

シニア女性は強い

強いシニア女子を見て思う。それにひきかえ、何と男どもの女々しいことよ、と。人生に少し躓いただけで世を怨み嘆き、妻に先立たれると立ち上がれないでいる寡夫の多いこと。積極的に趣味や人間交流に参加することに躊躇しているシニア男子の多いことよ。シニア女子の割り切り力、回復力、転換力は見事であり、そのどれをとっても男子は女子に劣る。これは、男女の先天的な能力の違いというよりも、彼女らには幾多の修羅場を全力で戦ってきたという自負があるからではなかろうか

geohechさん 
厳しい言葉だけど認めます。
私の知る限り奥さんに先立たれたご主人は数ヶ月内に後を追われます。 それに比べてご主人が逝かれた後の奥様は喪が明けたら、何か靄が晴れた如く元気に再出発されます。
男は定年までに全ての力を出し尽くして、以後抜け殻になってしまうのでしょう。  geotechさん生涯現役で行きましょう。

Re: シニア女性は強い

与作さん、どうもです。

> 私の知る限り奥さんに先立たれたご主人は数ヶ月内に後を追われます。 それに比べてご主人が逝かれた後の奥様は喪が明けたら、何か靄が晴れた如く元気に再出発されます。

やはりそうですか。
嬉しいような、少し悲しいような、複雑な思いです。

> geotechさん生涯現役で行きましょう。

はい、嬉しい励ましのお言葉、ありがとうございます。
死ぬまで現役で頑張るつもりです。
プロフィール

geotech

Author:geotech
geotechのブログへようこそ!

団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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