無知の知



 東日本大震災以降、「想定外」という言葉が乱用され、社会や国民に不安を募らせてきた。社会は専門家の高度な知識や判断能力に期待したが、幾度となく失望した。この失望には歴史がある。大正13年の桜島の大噴火のとき、楽観的見解を出した測候所や大学に怒り、被災者は「住民ハ理論ニ信頼セズ」の碑を建立して後世に警笛を鳴らした。

 科学が急速に進歩しているにもかかわらず、社会や国民の科学に対する失望は繰り返されている。繰り返されるばかりか、益々増大していると言ってよい。それでは、この社会や国民の科学に対する失望とは、その本質は一体、何であろうか。

 科学者が言ったことが当らなかったことが失望なのか。当然、それも大きな要素である。しかしそれだけが失望であるならば、失望させぬために、科学者はいつも最悪のシナリオ、つまり想定外を想定すれば済む。

 そうすれば、当らないであろう想定が当らなくとも社会や国民はよかったと安心する。そして、万が一それが当ったとすれば、科学者はそれ見たことかと鼻高々になれる。いずれにしても、科学者に不利益はもたらさない。

 科学とは、一体、それでいいのか。安全に安全を上塗りした考え方でよいのか。狼少年のように「危険だ、危険だ」と叫んでいればいいのか。科学の村の中で安泰としていいのか。それでは科学の進歩はあり得ない。

 危険と安全の境界領域に挑戦してこそ、科学ではないのか。そのためには、正々堂々と果敢に境界領域に挑戦し、何がどのように危険なのかを熟慮せねばならない。安全探しのための飽くなき挑戦が必要となる。

 今回の震災でわかった社会の科学者に対する失望、それは専門家やその集団が単なる予測違いをしたというのではなく、科学者の倫理感に不信を抱いたのである。不信の中身のひとつは「科学者による誤った科学」であり、もうひとつは「科学の限界に対する科学者の不認識」である。

 ソクラテスは「知らないのに知っていると思っている人よりも、知らないので知らないと思っている人の方が優れている」という。科学者が分かった物言いをするのにいつも辟易している。ほんとうは何もわかっていないのだ。「すみません、わかりません」と、なぜ言えないのか。「無知の知」こそ、科学者に教えたい。



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No title

ご無沙汰です
年2度のお祭りがあります
春秋の渡り鳥の飛去にてんてこ舞いしてご無沙汰です
お元気でご活躍何よりです

>なぜ言えないのか

それで飯を食ってるので素直に言えんのでしょう
それより体制に迎合する科学者が重んじられる風潮が有るのではないでしょうか
マスコミもしかりで、私はメジャーなマスコミは信用していません
マイナーな報道ばかり見聞きも問題有りとは思いますが

Re: No title

我太郎さん、
ことらこそご無沙汰しています。

いつも感動の写真を見させて
いただいてます。
とくに、兵庫県の盆地の
田舎風景がいいですね。

> それで飯を食ってるので素直に言えんのでしょう

科学者としての良識はないのかと
いいたくなります。

No title

すいません、わかりません
言ってしまえば楽ですねぇ~
免罪符かも?
つまらぬ意地を張って知ったかぶりミスで恥をかくより
聞いて正確に
と、厚顔も手伝っていますかね^^;

『聞くは一時の恥』

恥でもないですか?
無知認めるってこれほど楽はなかりけり(*^_^*)

もっとも
科学の大センセとワタクシでは
知らないの度合いが違い過ぎ、土俵が違ってますが^^;

No title

仰る通りです。
科学者にしても、ジャーナリストにしても素人と見下して、知ったかぶりをする人がマスコミに登場する機会が多すぎます。

Re: No title

みかんさん、
こんばんは。

> 言ってしまえば楽ですねぇ~
> 免罪符かも?

科学技術の資格制度の
面接試験の基本は、
知らないことは知らないという
ことなんですよ。
科学者の良識を問うてるんですね。

> 無知認めるってこれほど楽はなかりけり(*^_^*)

楽ではないです。
勇気が要ります。
それが科学者の良識と
心得ています。

Re: No title

爺さん、こんばんは。

> 仰る通りです。

わかっていただいて嬉しいです。
ほんとは何も知らないんです。
わかった風に思うのは人間の驕りです。
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