たかが就活、されど就活


 昨年度の就活戦線に勝利して4月から意気揚々、新入社員としてスタートした諸君。そして、あえなく戦線離脱した者。昨年度の就活は厳しいものだとの報道を、何度も見聞きしてきた。しかし、事実はどうだろうか。

 厚生労働省と文部科学省による「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」は、毎年10月1日、12月1日と翌年2月1日現在の就職内定率を調査し、4月1日現在での確定就職率を調査している。今年4月の確定就職率はまだ公表されていないが、下図に示す過去の就職(内定)率の経年推移からして、1昨年の就職率91.0%を底に昨年はやや持ち直したと思われる。



就職率



  「過去最悪の就職率」というキャッチフレーズがよく使われるが、その「過去」とはデータがある期間という意味だろう。掲載した就職(内定)率の経年推移も1996年以降のものであり、いずれにしてもオイルショック以降のものだ。我々団塊の世代の就職率はもっと悪かったように思うが、そのような古いデータは加味されていない。

 データの見方にもよるが、1996年以降の就職(内定)率は大局的には概ね91%~97%の範囲内で推移しているともみれる。すなわち、「過去最悪」といった表現よりも、「ある周期で限定した範囲で変動している」との見方の方が正しいと思われる。

 昔と今と比較した場合、大学生の数は飛躍的に伸びている。昭和60年の大学生の数は185万人であったが、平成23年では289万人にまで膨れている。大学全入時代の到来が間近という勢いである。だとすると、就職率の分母は加速的に増えるのだから、就職人口(採用人数)が同じ勢いで増加しない限り、必然的に就職率は低下して当たり前である。ここに就職率という数字のマジックがある。

 だからして、就職率という数字で一喜一憂するのもおかしい。問題は、一流大学=一流企業=幸福達成という図式が崩壊した現代においても、猫も杓子も大学に行き、誰もが上場企業を目指し、そうでなければ安定的な公務員を狙うという学生の意識にあるように思う。なぜなのか。

 今の学生はまだ昔の図式を信じているのか、それとも自分の可能性を信じて自分探しをしているのか。仕事に自己を実現しようと夢中なのか。はたまた、身の程を知らなさすぎるのか。

 考えてみれば、私の時代には大学に行けることは幸せであった。就職だって個人に選択の自由はなかった。指導教官の言われるままに就職するのが掟であった。就職できること自体が幸福であった。石の上にも5年、就職してすぐに辞めるのは大学の恥と思った。企業も優秀な人材を求めるために大学に行脚した。

 今はどうだろう。前述したように猫も杓子も大学に行き、誰もが上場企業を目指す。企業は優秀な人材集めに行脚しなくとも、ネットで群がる多数の学生の中から篩いにかければ済む。学生は「あの会社は給料がいい」「安定している」といった情報をもとに、選択肢をフルに活用する。結果、自分の思うところに就職できないと嘆く。

 しかし、学生は選択肢が多いということを妄信し、誤解しているのではないだろうか。企業にはとっくに終身雇用や年功序列はなくなっている。大きな会社だっていつ倒産するかわからない。どの会社も不安定で、給料が上がる見込みも薄い。それなのに、一流企業だと妄信して希望する。「この仕事が自分のやりたいことだ」と思い込む。自分は何に向いているとか。そもそも、大学に行けば幸せになれると妄信している。選択肢が多いと思われる現代、実は選択肢は非常に狭いのではないだろうか。

 選択肢がない与えられた環境のもとで自分探しをする。不得手な分野で別の自己能力を発掘する。そのような柔軟さを企業は学生に求めているのだと思う。就活戦線に離脱した諸君。まだまだ遅くはない。まだ君らは人生のスタートラインにいる。時間はたっぷりある。今からでも、じっくりと自分探しをしてみてはどうだろうか。



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No title

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

Re: No title

ビジネスマナーの内定?さん、
はじめまして。
シニア・ナビからのご訪問ではないんですね。

> とても魅力的な記事でした!!

ありがとうございます。

> また遊びに来ます!!

是非、是非。お待ちしています。

No title

大手企業に勤める人が言っていました。
2年間自由に留学できる制度があるが、
だれも手を上げないそうです。冒険を
しなくなっているようですね。ハングリー
精神なんて死語みたい。

Re: No title

rippleさん、こんばんは。

> 大手企業に勤める人が言っていました。
> 2年間自由に留学できる制度があるが、
> だれも手を上げないそうです。

やはりそうですか。
想像はしてましたが。
リスクを背負わないんですね。
私ら最初からリスクだらけですからね。

分かっている筈

私は貴兄がお示しの数字が物語るように、新卒の就職環境にそんなに大きな変化はないと思っています。私たちの時代に比べると、むしろ今の若い世代の方が世の中の事についてよく知る事が出来るので、まともな子はまともに卒業して、一定の考えを以て就活してるのではないでしょうか。
テレビや新聞の投書欄に時折現われる変な子は、これはこれでいつの世代でもいる人でしょう。私なんかもその口だったかもしれません。

でも貴兄の若い人への警告はその通りです。

Re: 分かっている筈

爺さん、こんばんは。

> 私は貴兄がお示しの数字が物語るように、新卒の就職環境にそんなに大きな変化はないと思っています。

はい、そんなんですね。

> テレビや新聞の投書欄に時折現われる変な子は、これはこれでいつの世代でもいる人でしょう。私なんかもその口だったかもしれません。

はい、いつの時代にもいます。

> でも貴兄の若い人への警告はその通りです。

選択肢があると勘違いしていることに警告します。
若者と結構、付き合っているのでわかります。
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