無主物


 「無主物」とはよく言ったものだ。福島のゴルフ場の除染を東京電力に求めたのに対する東電の回答である。原発から飛散した放射能物質は「無主物」だというのが、東電の主張である。

 結局、舞台は仮処分申請という形で法廷に持ち込まれたが、ゴルフ場の除染の必要なしとの裁定が下りた。その理由は、文部科学省が決めている校庭利用の暫定基準値である毎時3.8μシーベルトを下回るものであり、営業に支障がないということである。

 「無主物」というのは誰のものでもないということである。いわば、空気や水と同じだということである。空気や水は誰が作ったものでもない自然の恵みであるから「無主物」とされても仕方あるまい。しかし、放射性物質は自然に沸いて降ったものでも何でもない。東電の事故によって巻き散らかしたものである。これを「無主物」だという論拠がどこにあるというのか。

 海洋航海中のタンカーが重油を流して近隣諸国に被害をもたらす。これは海流なのだから「無主物」であり、タンカーに責任ないというのか。火事によって近所を延焼する。これは風がもたらした火炎であるから責任ないというのか。空気や地下水を汚染して近隣に影響をもたしても「無主物」だから責任ないのか。

 問題は、「無主物」だという荒唐無稽な東電の発言に対して、国もメデイアも誰も非難しないことである。第一、「無主物」だという発言がこの世にまかり通ること自体に問題がある。さらに気になるのは、政府および東電の補償に対するあからさまな自己防衛の姿勢である。

 私の憤りはさらに裁判官に及ぶ。私自身も技術的案件で裁判を幾度も経験して思うのは、裁判官の質の悪さである。関連する専門的事項の勉強が疎かであることは言うに及ばず、専門家招致の偏り、上級裁の意向重視、社会の道理・通念の欠如、国民・市民の目線の欠如、自身の考えや論理の欠如など、目に余ることが多すぎる。

 本件の場合、文科省の基準云々はどうでもいいことである。放射能物質が「無主物」だという主張に対して、真っ向から対峙していないことに問題がある。この種の裁判こそ裁判員制度に委ねるべきであろう。いずれにしても、放射能や被曝の問題において一番重要なことは、目を背けず真正面から取り組むことである。

 
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No title

この種の裁判こそ裁判員制度に委ねるべきであろう。
↑↑↑
       全く、同感です。
そもそも原発から飛散した放射能物質は「無主物」を
主張すること事態、考えられないことで、無責任極まりない。
それでも暴動が起きない日本は、不思議な国です。

No title

「無主物」
ものすごい詭弁ですね。
こんなことが通ってしまうんですか!
驚きです。

No title

たくさん事故が
起きているのに
絶対安全と
うそぶいた
奴らのことですよ

Re: No title

トパーズさん、こんばんは。
こんにちは、かな?

> それでも暴動が起きない日本は、不思議な国です。

私はこのことを好意的には思っていません。
耐える日本とか言われてますが、結局、意見がないのではと。
つまり、自身で考える能力に欠けているのだと。
言いすぎでしょうか。

Re: No title

みかんさん、こんばんは。
毎日ご苦労さまです。

> 「無主物」
> ものすごい詭弁ですね。

この世に詭弁は多いですね。
ごまかすとき、決まって難しい言葉使うんですよね。

Re: No title

rippleさん、こんばんは。

いつもありがとうございます。

ああ許すまじ
放射能被害を
我らの手で
また侵す
この愚かさよ
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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