ひたひたと



 あれほどに連日、テレビや新聞を騒がした原発関連や放射能関連の情報は、秋風とともにピタリと扉を閉ざした。原発本もピタリと息の根を止めた。今あるのは、山猫軒さんの「猫と暦」くらいである。この話は童謡調であるが、実は恐い恐いブラックユーモアである。

 今、福島で何が起きているのか。福島の町を出ていく人は、今、こっそりと出て行く。誰にも言わずに。避難するとは、おおっぴらに言えない空気がある。「裏切りもの」、「非国民」、「逃げ出し」と、そんな周囲の視線を感じるという。

 最近では放射能が心配だという発言もできなくなってきているという。「県や市が安全だといっているのに何だ!」という雰囲気がある。学童や中高生とて、友だち関係、部活動という、地域や家庭とは別の修羅場がある。

 福島県知事が10月に安全宣言を出し、専門家は講演会で「福島市では内部被曝はない」と語る。その3日後に福島市内の米から基準値を超えるセシウムが検出される。一体、何を信じたらいいのか。住民は身の危険と周囲の関係の中で揺れ動く。次第に住民は対立していく。この住民の対立こそが、政府や東電にとってはある意味、都合のよいことなのである。

 ここで再認識してもらいたい。今問題になっているのは、低レベル放射線の長期内部被曝であること。この低放射線長期内部被曝については何もわかっていないこと。そして、数少ないデータは広島と長崎それにチェリノブイニの症例だけだということを。

 都内の小学生が震災以降、激しい鼻血を出し続けている。放射能の影響を案じて、母親は都内の医者に数々診てもらったが、一蹴され、とりあってもらえない。同じような症状の子どもがいないかとネットで呼びかけたら、即日50人の親御さんから同じ症状の連絡が入ったという。

 広島市の63歳の女性は被曝2世である。父が爆心地から2キロ以内で被曝し、その3年後に生まれた。小さい頃から体が弱くよく倒れた。頭痛もひどかった。おなかの調子も四六時中、悪かった。2年前に人間ドッグを受けたときに、胃に奇形があることが初めてわかった。医師は小さい頃はもっとひどかったはずだという。7年前に亡くなった父は、娘の症状は原爆のせいだと家族に語っていたという。

 こうした事例を数々聞くに、これらの症例が原爆や原発と無関係だと誰が言えようか。そんな中、さいたま市の医師・肥田舜太郎さんの発言は、他のどのような偉い専門家の意見よりも貴重である。肥田さんは今年94歳。広島原爆の被爆者でもあるこの肥田医師こそが、医師として実際に被爆者の治療に当った経験者である。軍医として原爆以後に広島に入った「入市被爆者」を数多く診てきたからだ。彼のもとには講演依頼が殺到する。しかし、政府からも国会からもジャーナリズムからも声がかからない。なぜなのか。彼にネガテイブな真実を語ってもらいたくないからだ。

 肥田さんは言う。「被害が出てくるのはこれからです。66年前の原爆で、被害者がいまだに国を相手に裁判を起こしている。これが事実です」と。今、こうしている間にも、放射能の健康被害は「ひたひたと」進行しているのである。
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No title

原爆の犠牲になり
原発の犠牲になり
日本人は
その恐ろしさを
身をもって世界に示している

かなしい話です。

Re: No title

rippleさん、こんばんは。

二度と忘れまじ・・・・
そう日本人は誓ったノニ・・・・・・

> かなしい話です。

ほんと・・・・・

No title

ひたひたですか?怖い話です。

ほんとに怖いです!

ひたひたと・・・
じわじわと、これから症状が、がん発症患者が
増えることは自明の理ですね。

以前、こちらでも書きました友人は、まだ母の体内にも
宿っていないのに、被曝が立証されました。
母親も、友人もがんと闘い、母親は逝去。

だれが、影響はないと言いきれるのでしょう。
そして誰も責任をとりません。

Re: No title

みかんさ~ん、こんばんは。

> ひたひたですか?怖い話です。

そう、ひたひた忍び寄るです。
怖いです。私の同居人と同じくらい。

Re: ほんとに怖いです!

しあわせさがしさん、こんばんは。

何か我々の手ででいることないですか?
些細なことでもいいんです。
ちょっと考えていただけませんか。

お上が嘘を言っては困ります

福島県知事だけでなく政府の方もなんとなく収束に向かっているような発言が多いですね。
どうすれば安全に向かっている事を断言できるのでしょうか。
事故によってばらまかれた放射線物質の総量がどの程度か分かりませんが、たとえ1グラムでも回収されて処理されたとは聞き及んでいません。
除染なる耳慣れない言葉がすっかり定着しましたが、これは危険な物質を移動しているだけで根本的な解決とは程遠いと思います。

Re: お上が嘘を言っては困ります

爺さん、こんにちは。
いつもありがとうございます。

> 福島県知事だけでなく政府の方もなんとなく収束に向かっているような発言が多いですね。

確かに、もう爆発しないとなれば、放射能そのものに半減期があるので、
わずかずつレベルは低下するわけですが、
とても収束にはほど遠いです。

嘘をつくのはお上のみならず、多くの専門家も嘘とまでもいえないものの嘘に近いことを言ってます。

> 除染なる耳慣れない言葉がすっかり定着しましたが、これは危険な物質を移動しているだけで根本的な解決とは程遠いと思います。

おっしゃるとおり、除染とはどこかに移すことに他ならないですね。
セシウムを凝縮させたり中和させたりする技術が急ピッチに行われていますが、
間に合うとも思えません。
それより何より、今までの内部被曝をどうするつもりなのでしょうか。

だいぶ寒くなりました。お風邪を引かないように。
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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