敵はセシウムなり
放射能物質の拡散に伴う健康被害に関して、専門家の間でも真逆の話が出ている。このため、被災地住民は戦々恐々の不安な日々を送っている。また、放射能物質の拡散についても、日本のどの範囲まで健康被害の影響が及んでいるのか不透明である。
その一方で、フクシマの農産物は大丈夫だというキャンペーンが盛んであり、被災地に観光客を戻すのにも躍起である。こうした矛盾から、何を信じたらよいのか、日本全体が疑心暗鬼の状態である。
こうした不安と疑心暗鬼を誘発する根本原因は、とりもなおさず、実際のところ「わからない」からに他ならない。しかし、それにしてもである。わかっているデータの的確な公表がなされているかといえば、そうでもない。何がわからなくて、何がわかっているのか、明確な説明がない。
そこで、どのような種類の放射性物質が実際に危険なのかについて考えてみたい。それを説明するのに格好の図が、数日前の朝日新聞に掲載されていた。

この図は、放射性物質1億分の1グラムを吸入したときの被曝線量と体への影響を示したものである。この図によれば、ポロニウム210が最も危険で3700ミリシーベルト。次いでプルトニウム238とヨウ素131が690ミリシーベルトであり、さらにセシウム134、ストロンチウム90、ラジウム226、プルトニウム239、セシウム137と続く。これは同じ量を吸入したときの危険度順位となる。
この図には同時に、福島第一原発からの放出量も示してある。放出量はプルトニウム238が0.03グラム、ヨウ素131が35グラム、ストロンチウム90が28グラム、プルトニウム239が1.4グラムなどとなっているが、これらと比べようもなく多いのがセシウム137の4700グラムである。
結局、この図は何を意味しているのか。健康被害が大きい放射能物資は数々あれど、福島第一原発の被害に関していうと、敵は圧倒的にセシウムにあるということになる。だとすれば、山地斜面の除染などという、やにくもな対策を始めているが、セシウムに着目した実のある現実的な除染が必要なのである。
それでは、そのセシウムなるものは日本全国にどの程度、拡散しているのか。これも明確な図を見たことはない。そこで、3月~6月の全国都道府県の県庁所在地におけるセシウム137と134の降下積算値(平方メートル当り)の値を文部科学省が公表していたので、私は日本地図に分布図として作成してみた。

(by Geotech)
この図によれば、セシウムの降下は同心円状に一様ではないことがわかる。とくに、太平洋沿岸に沿って南北への流れが大きいことがわかる。セシウムの降下積算値がどの程度になれば健康被害に及ぶのか明確には言えない。しかし、いずれにしても日本全国に拡散していることは間違いない。
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