最終章:父から子への遺言状(その一)

 娘よ、君は超未熟児でこの世に生を授かり、持ち前の生命力で大きくなったね。生きてくれさえいればとの親の思いが、次第に人並みであることを期待し、さらにそれ以上のものを願うようになったね。大学生の君が帰宅しなくなったとき、これではいけないと思った。

 大学生の君を勘当したこと、その時の言葉、それは、親としての究極の選択であった。原点に立ち返り、一人の人間として生きることの大切さ、難しさ、だからこそ、せっかく掴んだ生命に感謝し大切に生きることの重要性、それを自身が肌で感じてもらいためだったんだ。

 勝気で目立ちがりで、行動的で前向きな性格は父の私にそっくりだね。単身カナダに長期ステイしたのも、イベント会社に就職したのも、派手なコスプレを好んだのも、みな君の性格そのものだね。そういえば、「今、タイにいるの」ってやぶからの海外電話も何度あったことか。超未熟児で生まれた自身の出生地を確認したいって、いきなり夜行バスで名古屋に行ったこともあったね。そう、その積極性と行動力はすばらしいと思うよ。これからの人生においても、自分らしく前向きに生きるんだ。

 ただ、君は今、ひとりじゃない。結婚も離婚も再婚も経験し、かわいい子を授かり、イタリアンシェフの旦那と三人暮し。再婚してもいいかって君が相談に来たとき、もうすでにおなかに新しい生命が宿ってた。そのとき、高卒の彼を立てるんだよ、決して上から目線しちゃいけないよ、旦那が夜の仕事ですれ違いが多いから心のつながりをどうするのか工夫するんだよ、旦那と何でも相談するんだよ、旦那の両親を大切にするんだよ、って涙ながらに話したよね。

 そう、もうひとりじゃないから、寂しくない、だからその分、まわりを気配って。超未熟児が紆余屈曲してようやく掴んだ幸せを大切に。超未熟児でありながら生きながらえてきた感謝を、今度は、旦那や子供や周りの人に授けるのだ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

geotech

Author:geotech
geotechのブログへようこそ!

団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
blogram投票ボタン
フリーエリア
シニア・ナビ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR