伊集院静について


 山猫軒文庫から又借りした本、伊集院静さん(以下、敬称を略す)の「大人の流儀」を読んだ。内容は、どうということもない。あるていど場数を踏んだ大人の男なら、いちいちもっとだと思うことだらけである。一言でいうならば、仕事にしろ遊びにしろ、叱るにしろ食するにしろ、いい大人の男なら覚悟してやれということである。

 この本の本題の内容は別として、注目すべきは、この本のエピローグに「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」を記していることである。この本は2011年3月18日に第1版を発行している。震災によって発行が多少遅れたであろうが、原稿は震災前にできていて、出版も大方、仕上がっていたはずである。しかし、震災によって、彼は妻・夏目雅子さんのことを始めて口にすることを決断し、エピローグにしたと思われる。その証拠に、加筆されたと思われるエピローグは、「大人の流儀」本体のものとは文体、体裁も全く違うのである。そして、彼は震災からあまり日が経たないうちに世に出すことを決意したものと、私は考える。

 伊集院静の文を読んでいると、私と同じ匂いを感じる。骨太であるがすごくシャイな部分、破天荒であるが繊細な部分などであるが、最も似通ったところは「二日酔い主義」というところだろう。ただし同じ二日酔いといっても、彼は銀座を闊歩して飲み歩き、私はそそくさと場末の居酒屋を飲み歩く。スケールが違うのである。それ以外に、伊集院静と私には共通点がある。1950年2月生まれの伊集院静と1949年1月生まれの私。私の方がちょうど1つ年上であるが、ほぼ同じ年代であること。それに同じ山口県人であることである。しかし、決定的に違うのは人種が違うことである。

 今から16年前、伊集院静は三人目の妻として篠ひろ子を選ぶ。そして、篠ひろ子の故郷・仙台に移り住むのであるが、そこでひとつの転機があった。瀬戸内海の海辺(山口県・防府市)で生まれ育った彼は海沿いの土地に住むことを提案する。が、海辺ではなく高台に家を建てたのである。篠ひろ子の母親の『神主が来てお祓いした土地は、10年住まないと本物にならない』という話に従ったからである。震災直後、彼はこうつぶやいた。「昔の人の言うことは、90%は間違いがないということをおもい知った」と。「女房たち家族は16年前、私の意見を退けたことで、みんなの命を救った」と付け加えた。

 彼にとってこれは、死というものが生と紙一重であることを改めて実感した体験であったろう。さらに彼はこう続けた。「2年前、地震に備えて耐震工事をすませておいたのは正しい判断だったし、非常食や手回しラジオなどの防災品を用意しておけと命じたことも功を奏した。言われた通りに備えをしてくれた女房には、感謝をしなければいけません」と。

 この震災を「天罰」と意味づけした人がいたが、それはあまりに無謀な言い方である。そもそも地震は地球が起こしたものである。天罰でもなければ神の啓示でもない。どのように科学技術が進歩しようとも、人類は大自然の前にはほとんど無防備である。だからして、自然に背くことなかれ。自然を欺くことなかれ。昔からの言い伝えや知恵を引き継いで自然と共存してこそ、生きながらえてきた術(すべ)があるように思われる。

 伊集院静さんは震災を機に、それまで封印してきた夏目雅子さんとのことを世に知らしめ、そのことによって、現在、自身が生かされていることに感謝しようとしているのだと、私はこの本を読んで思った。











大人の流儀


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ふふふ・・・

読み終えましたか?
男のジオさんとおんなのワタシメでは
ずいぶんと感じ方が違いますルなぁ。

どのようにって?
それはまた今度!

Re: ふふふ・・・

しあわせさがしさん、こんばんは。
現場から今、帰ってきました。

> 男のジオさんとおんなのワタシメでは
> ずいぶんと感じ方が違いますルなぁ。

女性がどのように感じたか、興味があります。
また是非、聞かせてください。
どこぞでお酒飲みながら語るのもいいですね。

No title

読んでいませんし、流儀はいろいろだと思いますので、読むつもりもありません。
しかし「大人」との呼びかけは心に響きます。
亡き母から何度となく「早く、或いはもっと、大人になりなさい。」と注意を受けて過ごしてきた人生ですから。
私は己について自己責任を取るのが大人だと思っているのですが、どうもそうではなさそうです。もっと周囲の人の事を考えなくてはいけないようです。

Re: No title

爺さん、こんにちは。

> 流儀はいろいろだと思いますので、

そりゃ、そうです。
他人から言われる筋合いはありませんね。

>亡き母から何度となく「早く、或いはもっと、大人になりなさい。」と注意を受けて・・・・・

その時のお母さま、ほんとはどういう思いだったのでしょうかね。

> 私は己について自己責任を取るのが大人だと思っているのですが、どうもそうではなさそうです。もっと周囲の人の事を考えなくてはいけないようです。

自己責任を取れることは大人の必要条件ではないでしょうか。
それに加えて、周囲のこととか気配りできるようになれば十分だと思いますが。

No title

山口の男にはいろいろ思うことありですが…^^;
この本、ちょっと読んでみたいです。

山猫文庫って?
ネットでお借りできるんですか?

Re: No title

みかんさん、おはようございます。
やっと朝晩、寒くなりましたね。
宮島の紅葉はもう少しかかりそうですよ。

> 山口の男にはいろいろ思うことありですが…^^;

それって、まとめてみてくださいね。

> この本、ちょっと読んでみたいです。
> 山猫文庫って?
> ネットでお借りできるんですか?

シニア・ナビの山猫軒さん所有の本を
お借りしてます。
今、私の所にあるのは、
この本の他に、「原発文化人50人斬り」と
川上弘美のエッセイ集です。
住所を教えていただければ、山猫軒さんの
承諾を得て送ることも可能です。
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