頭が下がる思い


 自分にはとても真似できないことに対して、頭が下がる思いをすることがある。最近も、頭が下がる思いをした。自宅近くにある道路沿いの花壇で、いつも見かけるひとりの老人である。真冬を除けば、年中、花壇の手入れをしている。もう10年近くも同じ光景を見かける。種植えから水遣りまで、草取りに至っては腰を据えてやっている。今年の夏は例年になく暑かった。もう御年、80歳にもなろうかと思えるよぼよほの老人であるが、連日、麦わら帽子をかぶって、汗だくで水遣りに精を出していた。いくら暇といっても、いくら花が好きだといっても、とても真似できるものではない。ほんとうに頭が下がる思いである。

 もうひとつの頭が下がる思いの対象者は、和歌山県那智勝浦町の寺本町長である。報道でご存知の方も多いでしょうが、その行動を再現する。台風12号の豪雨により、町内全域に大雨洪水警報が発表されたのは9月2日未明である。町の全職員に自宅待機を命じて、町長自信も帰宅。翌朝3日は土曜日であったが、雨が気になり役場に出勤する。役場で寝泊りして避難の準備に追われた。町長の携帯が鳴ったのは4日午前2時頃であった。妻の昌子さんからの電話であった。「川の様子を見にいった早希(長女)が流された」という電話は途中で途切れた。直後、町長の自宅周辺は土石流に埋まった。

 午前9時50分に早希さんの遺体が近所の人に発見された。役場を出て早希さんの亡がらと対面したが、すぐに職務のため役場に戻った。昌子さんの遺体は8日、4Km下流の海岸で見つかった。それでも町長は公務を続けた。「私は私の職務を遂行するだけ」ときっぱり。その後も、役場近くにアパートを借りて公務に励む。2人の葬儀は町内の行方不明者が全員発見してからだとの堅い意志がそうさせた。10月3日、被災後初めて公務を休んで2人を弔った。

 いくら公務とはいえ、誰それとできるものではない。長女の早希さんの亡がらに一晩、付き添ってあげたかったであろう。妻・昌子さんを自ら捜索したいと思ったであろうに。そして何より、2人を早く弔ってあげたかったでしょう。周囲もそうしてくださいと説得したらしいが、頑として聞かなかったという。個人の思いも公務という責任感が掻き消したわけである。とても真似できるものではない。長女の早希さんが亡くなった翌日は彼女の結納の日であったという。

 頭が下がる思いの上記2例は、個人と公務という点で意味合いが違う。しかし、いずれも個を犠牲にしている点、信念と覚悟をもっている点で共通する。秋の叙勲などというと、決まって名誉教授とか医師とかが名を連ねるが、真に偉いのはこういう人であり、こういう人にこそ叙勲を与えて欲しいものである。
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感服

ワタシもこの寺本町長の一件はTVのニュースで見たし
ご本人がインタビューを受けているのも見た。
胸が詰まってこらえきれず泣きましたよ。
自分も土佐のいごっそう、けじめを付けて男らしく行きよう!と決めて
いますが・・・・・彼のように対処できるかどうか・・・

Re: 感服

やまとおのこさん、こんにちは。
広島は久しぶりの雨です。
土佐もそうでしょ。

> ワタシもこの寺本町長の一件はTVのニュースで見たし
> ご本人がインタビューを受けているのも見た。

やはりそうでしたか。

> 胸が詰まってこらえきれず泣きましたよ。

こういう話、泣けますよね。

> 自分も土佐のいごっそう・・・・

はい、私も長州藩士の子孫、
覚悟なら負けません。
酒の量と男意気は土佐には負けますが。

No title

わたしの治療室のそばのごみ置き場も、
小柄な80近い老人が掃除をしています。
雨の日も風の日も、ほとんど休みなく。
ペットボトルや缶をつぶし、瓶を整理し、
ゴミ置き場を掃除する。ときにはごみが
風に飛ばされたり、弁当などがカラスの
大群によってひっちらかっている。
それでも黙々と奉仕をしている。まったく
頭が下がります。

うちは事業所ごみなので民間の業者が
収集しています。念のため。

Re: No title

rippleさん、こんにちは。
今日は久しぶりの雨です。
関東も雨でしょ。

> 小柄な80近い老人が掃除をしています・・・・・・

どこの街にもそのような尊敬すべき御仁がいますよね。
ほんと、頭が下がります。
東京電力の幹部に罰ゲームでさせたい気分です。

No title

私利私欲の人ばっかりでない。そんな人もあるんですね。

おととし?去年?(あぁ~記憶が^^;)
歩いた熊野古道のゴールが那智大社がでした。
被害を聞いた時は驚きました。

>私も長州藩士の子孫、
  覚悟なら負けません。

私…周防の水飲み百姓の子孫。
お近くなれど
覚悟ないふぅにゃふにゃですが^^;

いい話には泣けます。じんときます。
よいお話をありがとうございます。




No title

秋の叙勲などというと、決まって名誉教授とか医師とかが名を連ねるが、真に偉いのはこういう人であり、こういう人にこそ叙勲を与えて欲しいものである・・・・・全く同感です。でもこういう人は、殊勲などには
興味がないのではないでしょうか。

No title

その町長さんは、漢(をとこ)ですね・・・・
昔から少ないんでしょうけれど、
現代は更に減って来ているんでしょうね。

歌壇の手入れをされているご老人も
尊敬は出来るけれど、自分は出来そうもない・・・
ここは私も同じです。(+-+;)(反省・・・・)

ちょこっとづつなら、実行していますが・・・・これからも
出来ることを、ちょこっとづつ。

Re: No title

みかんさん、おはようございます。

> 歩いた熊野古道のゴールが那智大社がでした。
> 被害を聞いた時は驚きました。

そうなんですか。
熊野はまだ行ったことないです。
いいところでしょうね。

> 私…周防の水飲み百姓の子孫。
> 覚悟ないふぅにゃふにゃですが^^;

いえいえ、周防には頭のいい方が
多いですから。
岸や佐藤ではありませんよ。

> よいお話をありがとうございます。

こちらこそ、ありがとう。

Re: No title

トパーズさん、おはようございます。

>・・・・・全く同感です。でもこういう人は、殊勲などには
> 興味がないのではないでしょうか。

そうですね。でも、そっとでもいいから、
表彰してあげたい気持ちになります。

Re: No title

ミルフィーユさん、おはよう。

> その町長さんは、漢(をとこ)ですね・・・・

男でなくて、漢ですね。

>これからも
> 出来ることを、ちょこっとづつ。

それは私も同じです。

同感です

>真に偉いのはこういう人であり、こういう人にこそ叙勲を与えて欲しいものである。

こういった方に差し上げるべき勲章は何であるべきでしょうか。国がメダルの玩具みたいものを贈呈して済むものでもなさそうです。

Re: 同感です

爺さん、いつもありがとうございます。

> こういった方に差し上げるべき勲章は何であるべきでしょうか。国がメダルの玩具みたいものを贈呈して済むものでもなさそうです。

そうですね。何がよいのでしょうか。
さしずめ、まず日本国印の表彰状は贈呈したいですね。
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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