言葉狩り


 もううんざりしているだろうが、あえて再び、「死の町」発言について記す。私自身もうんざりしているが、どうしても正確なことを述べておかないといけないからだ。

 伝えられているところの、事の経過は今更、省略する。新聞各紙の報道の順序や、ニュアンスの違いなど、細かく検証すれば矛盾が多く、突っ込みどころはいくらでもある。しかし、それを今更、ほじくり返したところで、たいして意味のあるものではない。だからそれは辞める。ただ今更ながら、「死の町」発言が大臣の職を辞するに値するほどの問題発言だったのか、私は大いなる疑問をもつ。

 確かに、「死の町」という表現だけを取り上げると、いかにも無神経さを感じざるを得ない。自分のふるさとを「死」という言葉で表現された被災者の気持を考えれば、とてもそのような表現が口から出ようはずがない。しかし、鉢呂氏は、被災地を「死の町」と決めつけて切り捨てたわけではない。前後の言葉を含めた発言を、そのままの形で再現すると、鉢呂氏は、以下のように語っているのである。

 『大変厳しい状況が続いている。福島の汚染が、私ども経産省の原点ととらえ、そこから出発すべきだ。事故現場の作業員や管理している人たちは予想以上に前向きで、明るく活力を持って取り組んでいる。3月、4月に入った人もいたが、雲泥の差だと話していた。残念ながら、周辺町村の市街地は、人っ子ひとりいない、まさに死のまちという形だった。私からももちろんだが、野田首相から、「福島の再生なくして、日本の元気な再生はない」と。これを第一の柱に、野田内閣としてやっていくということを、至るところでお話をした。』

 このように、投げ出したニュアンスで「死の町」という言葉を語っているのではない。視察した町村の現状を語る文脈の中で、厳しい状態を描写したということに過ぎない。好意的に見れば、見たままの状態が「死の町」であるという厳しい現状認識があるからこそ、徹底的な除染と再生に向けた対策を打ち出して行く必要がある、というふうにみることも可能である。

 とすれば、この表現のどこが問題なのか。この程度の言葉使いを問題にされたのでは、政治家はやってられない。そのように私などは思うのである。これは、実質的な言論タブーの成立であると言わざるを得ない。
 
 このように、メデイアは文脈の端くれを取り上げた「言葉狩り」に専念する。本拠本丸の本質的なことを追及する姿勢すらしない。また、その「言葉狩り」の罠にまんまとかかる政治家がいる。うろたえながら辞任する末路。このような光景を、我々は同じコマーシャルビデオを繰り返し見るように、何度、見せつけられてきたことか。メデイアの凋落を今更、責めてもはじまらない。政治家たるもの、信念というものがあるならば、切腹覚悟の命をかけた信念を貫く覚悟を持て!
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同感です

与作も「言葉狩り」に怒りをおぼえ、9月11日の与作ブログでメディアに対し怒りの言葉を書きました。  
同じ気持ちで書かれたので嬉しく存じます。

Re: 同感です

奈良の与作さん、おばんです。

>9月11日の与作ブログでメディアに対し怒りの言葉を書きました。  
> 同じ気持ちで書かれたので嬉しく存じます。

ええ、覚えています。同感していただいて嬉しいです。

No title

おばんです。
geoさんのように、メディアに踊らされず、
冷静に判断できる人は少なく、すぐ反応して
踊らされる烏合の衆が日本では、圧倒的に
多いという結果だった・・・???

Re: No title

トパーズさん、おはようございます。
ここ広島は、一昨日とうって変わって晴天です。
もう色づいた落ち葉がチラホラ舞ってます。

> 冷静に判断できる人は少なく、すぐ反応して
> 踊らされる烏合の衆が日本では、圧倒的に
> 多い

日本の文化や伝統は好きですが、
迎合主義、体制主義、自己主張の少ない
日本には辟易してます。
私には大陸の血が流れているのかも知れません。

天に唾す

私も鉢呂氏の発言があれほど問題視されたのか未だに釈然としない一人です。会見の際ある記者が仮にも大臣の職にある方に、人格を無視するような暴言を吐いていましたが、メディアというものはそんなに偉いんでしょうか。
その記者が強面の東京都知事や大阪府知事のような方に対しても同じ態度を取れるのでしょうか?
興味本位に一部の発言のみ強調するTVは論外ですが、すべての文章から発言の趣旨を論調する新聞が殆どなかったのは残念です。
あれ以来野田さんは揚げ足を取られぬよう物言わぬ首相となり、これを容認せざるを得ないメディアは、天に唾し己にかえるという結果になっていることをどう考えているのか疑問に思っています。

この問題の奥は深そうです

確かに政治家が信念を持つ必要はあります。
しかしこの問題(マスコミの言葉狩りに引っかかった)は奥が深そうです。
野田総理自身が枝野を経産大臣に据えるにあたって、一芝居打ったという説さえ出てきました。下記ブログの1月16日の後半を読んでみてください。
http://fusenmei.cocolog-nifty.com/top/

Re: 天に唾す

永遠のハードバッハーさん、こんにちは。

> 記者が仮にも大臣の職にある方に、人格を無視するような暴言を吐いていましたが、メディアというものはそんなに偉いんでしょうか。

偉くなんかないです。世間知らずの馬鹿です。

> その記者が強面の東京都知事や大阪府知事のような方に対しても同じ態度を取れるのでしょうか?

弱いものいじめですね。

> あれ以来野田さんは揚げ足を取られぬよう物言わぬ首相となり、これを容認せざるを得ないメディアは、天に唾し己にかえるという結果になっていることをどう考えているのか疑問に思っています。

どじょうは泥にこもったきりですね。
やがてメデイアは崩壊するでしょう。
メデイアの教育からはじめないと。

Re: この問題の奥は深そうです

爺さん、引き続いてありがとうございます。

> 野田総理自身が枝野を経産大臣に据えるにあたって、一芝居打ったという説さえ出てきました。下記ブログの1月16日の後半を読んでみてください。
> http://fusenmei.cocolog-nifty.com/top/

そうですか?それは初耳です。早速、見てみます。
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