職業人としての父(その七)

 会社を辞めて独立すると、私の周りの交友関係はガラリと一変した。会社のネームバリューと役職の肩書きの恩恵に預かろうとたむろしていた業者はあっと言う間に散った。同業者はこの際とばかりに罵声を発した。

 ささやかな起業祝宴の際、「これまでは大手の支店長だから頭を下げてきたけど、これからは一介の下請け業者だからな」と、同業の友人が傲慢にいきがって放った。そのとおりである。この友人と先日、飲んだが、「あの一言が私を助けた。ほんとうにありがたい言葉だった」と礼を言った。

 今までお役所にもあまり頭を下げなかった人間が、誰にでも頭を下げるようになった。それは、別に苦でもなんでもなかった。立場が代われば自分が代わればよいのだ。頭を下げるのはタダだし、プライドは内にしっかりもてば良い。仮に相手が理不尽なことを言う場合は、一旦、頭を下げて、後ろを向いてベロを出しておけばよいのだ。

 捨てる神あれば救う神あり、とはよく言ったものである。コピー屋さんとか写真屋さんとか、今まであまり気にとめなかった人が案外に親切にしてくれた。また、役所の人は「会社に仕事をお願いしてるんじゃない、お前にお願いしてるんだ」と言って、仕事を手配してくれた。そのうち、罵声を発した同業者からも仕事を頼みたいと言ってくるようになった。
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おはようございます。

会社設立で苦労された様子が読み取れます。

今も活躍されているようですね!

また訪問します。

みのり
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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