「ふる里」と「人の命」


 三陸沖においては、東日本大震災と同規模の地震が過去にも100年~150年の頻度で起きている。このことは、いろいろの書物からも立証済みであり、現地には石碑などにその証が残されている。過去の震災を教訓に、高台に集団移転した集落もあるという。しかし時代の変遷とともに、次第に海岸に戻ってきたという。

 和歌山県を中心とした紀伊半島の台風被害は、例年のように繰り返されている。今回の台風12号災害によって死者・行方不明者12人以上にのぼった奈良県・十津川村においては、1889年(明治22年)の大水害で168人が亡くなっている。当時の十津川村は壊滅状態となり、2500人の村民が新天地を求めて北海道に集団移住した。現在の北海道「新十津川町」である。

 少し前、1993年に起きた北海道南西沖地震では奥尻島を中心に大きな被害を受けた。津波や火災によって死者・行方不明者230人を出した。島は高台移転を基本に復興を進めてきた。しかし時とともに、住民は次第に下(海岸)に降りてきているという。

 悠久のときを経て災害は繰り返される。そのたびに人々は「ふる里」から逃れる。しかし時の経過とともに、人は過去の恐怖を記憶として失う。そして再び、「ふる里」に戻る。自然災害は決して想定外ではない。繰り返されてきている。その「ふる里」たるや、自然災害に打ち勝つほどに改善された訳でもない。さらに、自然災害は益々、起きやすい環境に変化し、猛威を振るう。しかし、それなのに、人々はまた「ふる里」に戻る。

 これは人間の知恵と煩悩がなす仕業であろうか。ここで命題を与えよう。あなたは「ふる里」をとるのか「命」をとるのか。漁業をするのに海岸線は便利いいだろう。山間部は空気も綺麗だろう。河のほとりは川遊びもできよう。田畑や畜産には高原がよかろう。しかし、その海岸線や山間部や河のほとりや高原が甚大な自然災害を起こし易いと分かっていても、そこに暮らすのか。「人の命」と引き換えにしてでも暮らすというのか。

 「ふる里」のある人とない人、「ふる里」への思い入れにもよる。人それぞれに事情もあろう。しかしそれらをすべて勘案したとしても、「人の命」と引き換えにしてでもそこに暮らすというのか。

 別に他人事の話をしているのではない。私自身のことを言おう。かれこれ35年も前、浜松・遠州浜に暮らしていた。その頃、地震のことを専門にしていた。伊豆半島の震災現場に常駐したこともあった。地震をやればやるほど地震が恐くなった。そして、広島転勤を希望した。

 臆病者と言われようが、卑怯者と言われようがよい。私はそこから逃げてきたのだ。家族を守りたい一心であった。その行動が正しいのか間違っているのか。その答えは、もう少し経たないとわからないけど。
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No title

ふる里とは、忘れがたきところ、思い出ずるところ、向こう三軒両隣の
絆のふかきところ、古き友が迎えてくれるところ、と考えると住み続け
たいところである。避難所生活を余儀なくされていた被災者が一日も
早く仮設住宅に移りたいと云ったが、最近は仮設が空いているという
知人の居ない仮設は寂し過ぎる、津波の恐怖はあっても元の家へ戻
りたい希望を出している人が多い、それが無理なら地域ごとの移転
ならやむをえない・・解かる気がする。

ジオさんは、臆病者でもない、卑怯者でもないですよ
他力に頼らない意思の強さは半端ではないよ・・ご立派、あやかりた
いなぁ~(爪の垢はいらないよ)

忠七飯読んでくれて有難う

Re: No title

マトンさん、こんばんは。

「ふる里」という言葉を使っていますが、
居住地とした方がいいかもしれません。
わざわざそんな危ないところに住まなくても、
少し離れたところに住んで、そこをふる里にしてはどうかということです。
私には「ふる里」がないから勝手なことが言えるのかも知れませんが。

高台・・・

奥尻のことは僕もニュースで知りました
7割近くの人が、元の海岸線のそばに戻り、住んでいるそうですね
ま、いろいろな事情があるのでしょうが
人命に勝るものはないと思うのだけど・・・

三陸海岸でも、高台移転を反対する人が多いそうですね
政府だけの責任だけでなく、新しい街づくりは住民の協力なしでは出来ません
なかなか難しいですね

僕は父から、「家を建てるときは、水害、土砂災害のないところを探せ」
と、しつこく子供の頃から言われ続けてきました
そして、そう言う場所の探し方も教わりました
今度は子供達に同じことを言っております

Re: 高台・・・

ブルさん、お久しぶりです。

> ま、いろいろな事情があるのでしょうが

そんな人は今度地震起きたとき泣き言いうなって
言いたいです。

> 三陸海岸でも、高台移転を反対する人が多いそうですね

まだわかってない。
冷たいようだけど、子孫がまた被害に遭うでしょう。

> 僕は父から、「家を建てるときは、水害、土砂災害のないところを探せ」
> と、しつこく子供の頃から言われ続けてきました
> そして、そう言う場所の探し方も教わりました
> 今度は子供達に同じことを言っております

素晴らしい父上ですね。そして、ブルさんも。
満点パパです。

No title

お早うございます。
そうですか、そんな訳で、広島へ・・・・

我が街にもいました。(過去形ですが)
地震洞窟学会?のメンバーだった学者の方が、開発中に地層を見て
ここへ住むことにした、と言うお話でした。
ちょっと安心して住んでします。

ただ、農林・漁業等に従事している方は、他へ、の決断はなかなか
難しい所でしょうね。

geotechさんのご近所さんは、きっと安心ですね。

地震は恐い

知らぬが仏って言いますが、知れば知るほど恐いですね。
地震・放射能・汚染など、自然は特に。

結婚するまで、地滑り地帯に住んでいました。
立ち退くまでいきませんでしたが、大雨が降るたびに避難して。
今から思えば、よく無事だったと。
ブログを拝見していて、無謀だった事がよく分かりました。

Re: No title

ミルフィーユさん、おはようございます。

> そうですか、そんな訳で、広島へ・・・・

広島でも山口でも岡山でも、とにかく
地震と災害が比較的少ない中国地方
瀬戸内海側を希望しました。

> 地震洞窟学会?のメンバーだった学者の方が、開発中に地層を見て
> ここへ住むことにした、と言うお話でした。

それは何かを発見したというより、堅硬な岩盤であることを
確認したということでしょうね。

> ただ、農林・漁業等に従事している方は、他へ、の決断はなかなか
> 難しい所でしょうね。

それはわかります。ただ、便利はいい、リスクはいやだじゃ、
わがままというまでですね。

何かまだ自然災害の脅威を侮っているところがあるように
思えてなりません。

Re: 地震は恐い

まこさん、おはようございます。

> 知らぬが仏って言いますが、知れば知るほど恐いですね。

知らないほうがかえって幸せかもしれません。

> 結婚するまで、地滑り地帯に住んでいました。
> 立ち退くまでいきませんでしたが、大雨が降るたびに避難して。
> 今から思えば、よく無事だったと。

それはよかったですね。
でもよくそんなところに住んでましたね。
同じ地すべり地帯でも、大雨のときだけ避難すればよい
レベルの地域から見捨てて移転した方がよいレベル
のものまでありますから。
行政ではなく、現場をわかった専門家のアドバイス
が重要ですね。
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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