「深層崩壊」の真相(下)


 今、流行の「深層崩壊」について、専門家として紹介される大学教授は決まってこのように言う。“深層崩壊は岩盤の深いところから突然、破壊するものであり、到底、予測できるものではない”と。果たして、ほんとうにそうであろうか。

 国道沿線の道路法面は毎年、点検が行われている。県道沿線の道路法面も5~8年毎に点検されている。したがって、主要な道路に近い法面や斜面の安定性は一応、担保されているといえる。それでは、道路から離れた斜面はどうかというと、ほとんど調査がなされていないのが実情である。調査エリアがとてつもなく広範囲であり、予算もおぼつかないということが理由である。だとすれば、山間部の「深層崩壊」は突発的であり、全くの想定外なのか。

 山々はそれぞれに構成される地質や地下水の状態が異なる。重力作用によって、永年的に変動している。過去に大きな地すべりや大崩壊があったり、そこまでいかなくとも、大きな範囲が全体的に少しだけ滑動し(ズレ)たりしている。また、大きな地すべりや大崩壊の前兆として、表層が日々、少しずつするズレる現象(クリープ現象)も見られる。

 山は動いていないと思ったら大間違いである。山は常に息をしている。問題はそのひそかな息を人間が感知できるか否かという点である。「深層崩壊」がある場所で発生して、隣の斜面では発生していない、その事実をもってしても、「深層崩壊」を引き起こした要因がそこにあるわけである。

 山が昔、地すべりを起こした、活動した、そういった経歴は古傷として山に刻まれるものである。私の経験では、新たな「深層崩壊」と言われるものの10中8,9で古傷が確認できる。人間で言えば、前科があるということ。再犯性が高いということですね。

 それでは、その古傷はどのように確認されるのか。空中写真を利用した地形判読によって可能である。日本全国、定期的に航空撮影が行われている。最も旧いものは米軍によるモノクロ写真がある。そういう写真は現在ではほとんどネットで入手できて、その写真を利用して3D画像として地形判読することができる。

 実例を1例、紹介しよう。下の写真(公園整備後)は災害前の空中写真であり、赤い範囲が崩壊して斜面の下に流れた。しかしその崩壊の頭部は、上の写真(s49年)では既に崩壊の頭部に相当する滑落崖(かつらくがい)がくっきりと明瞭に確認できる。つまり、その崩壊は昭和49年当時、既に発生していたわけである。おまけに、この場所は山頂部の公園整備事業を行っていて、古い崩壊の最も弱点である斜面尻(下端部)を駐車場として切土しているのである。つまり、古い傷跡を認知できずに、切ってはいけないところを切ったことによって誘発された人災に他ならない。



深層崩壊

 テレビに出てくる専門家と称する先生方は実務経験が薄い。だからして、机上の空論となる。そのほうが余計なことは喋らずに済むし、一般的なお話で済む。しかし、事は人命に係わることである。上記したような地形判読を日本全国の危険なエリアを対象にして実施したとしても、子供手当ての10分の1の予算で可能である。国が仮に防災予知予算を出したとしても、問題は予算の使い方である。机上の空論を繰り返す無意味な委員会を立ち上げて予算を消化することになる。肩書きや名誉による方程式から実務主義に切り替わる日はいつの日か。、


〔おことわり〕
今回の奈良県五條市大塔町宇井の「深層崩壊」についても地形判読しました。しかし、死者・不明者が出ていて未だに捜索している現状において、将来の裁判にも関連するため、その結果は公表いたしません。
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非公開コメント

No title

自然災害とはいえ
かなりの部分が
人為的なもの
開発という名の
自然破壊

それはそうと
個人的には
五條の
柿の葉寿司が
心配です

Re: No title

rippleさん、こんにちは。

> 開発という名の
> 自然破壊

案外、これが多いですよ。
奈良の場合も・・・・・
(あまり詳しくはいえませんが)

> 五條の
> 柿の葉寿司が

どんな寿司ですか?
聞いたことはありますが・・・・

興味深いです

こんばんは~

今日だけで二回ほど(休憩時間と今)読みました。
とても分かりやすい説明です。
興味深いと感じると同時に、怖くもなりました。

山は息をしている、自然は生きている、と感じました。

Re: 興味深いです

おしゃれな猫さん、こんばんは。

結構、この種の話題にはコメント少ないんです。
とりあえず、自分とは関係ないとか、
行政とかのかかわりをしたくないとか、
いろいろあるでしょうけど。
でも、個人の命の保障と生き方の問題ですから、
究極、誰もが避けて通れないことだと思います。
今度、考えがまとまり次第、人間の生き方について
述べますね。

No title

知性あふるるお話で~私にはむつかしいのですが、
専門家のお話、必ずしも正解でないって事だけは納得です。
専門家がこねくりまわした机上の空論で作られる政策に現場が踊らされる仕組み、どこの世界にもありそうです。

>肩書きや名誉による方程式から実務主義に切り替わる日はいつの日か。、

同感です。介護の世界も然りなんですv-16

No title

お早うございます。

おしゃれな猫さんと同じで、分かりやすい解説で、
地学の先生がジオさんだったら、赤点に怯えず、
心安らかに学生時代を送れたのでは??と思ってしまいました。

専門家も、現場を知らずに知識だけの人は、はっきり言って
使えませんね。

不動産業界でも、ここ20数年間は右肩下がりの時代が続きましたから、相続などで、鑑定士さんの出した値踏みが現実と余りにかけ離れているので、その値段で売れるなら、本人(鑑定士)にやってもらおうよ、と現場で笑い合った事など、しょっちゅうでしたので、分かります。

でもこの件は、命にかかわることなんですよね。
ことは重大ですね。

Re: No title

みかんさん、おはようございます。

> 専門家のお話、必ずしも正解でないって事だけは納得です。

○○教授というだけで、何にでも専門家になれますからね。

> 同感です。介護の世界も然りなんです

みかんさんの介護職場のお話でも、似たようなことが沢山、出ていますよね。
みかんさんの、ぶっちゃけ話は爽快です。

Re: No title

ミルフィーユさん、おはようございます。

>分かりやすい解説で、

ありがとうございます。
分かり易くするのも、この程度が限度でして(ポリポリ)・・・

地学はやはり嫌いだったのですね。
私とて、地学なんか受験にあまり関係ないし
嫌いでした。

> その値段で売れるなら、本人(鑑定士)にやってもらおうよ、と現場で笑い合った事など、

わかります、わかります。
この業界でも値崩れがひどくて、ありえない金額でいってこられるんです。
そんなときは、その値でできるところがあるんだったら、そこにお願いして
くださいと。
つまりは、開き直りです。
安かろう悪かろうの時代からいつ脱却するのでしょうか。

No title

深層崩壊について、勉強しました。

要するに予知できないとされる深層崩壊も
真実は、予知できると言うことですね。
「古い傷跡を認知できずに、切ってはいけないところを切ったことによって誘発された人災に他ならない。」

そうなんですね。
これが真相なら、gioさん、もっと大きく声を上げましょうよ~
ブログ見る人は、限られてるのでは・・・

ワタシは、こういうことには全く無知なので、真相についての
コメントは出来ないですが・・・

ワタシ、明日から1泊で、高校時代の部活動の仲間で四国カルストへ行きます。部活動は地学部
恩師は、オーソリティーだから話してみよう~

Re: No title

♪ かをるさん、遅くなあってごめんね。

> 深層崩壊について、勉強しました。

お役に立ててよかったです。

> これが真相なら、gioさん、もっと大きく声を上げましょうよ~

地位も名誉もない者が声をあげても
無駄です。

> ワタシ、明日から1泊で、高校時代の部活動の仲間で四国カルストへ

そうですか。楽しそうですね。
部活動は地学部だって?
妖怪と地学は結びつかないっす。


No title

いつも理路整然としたお話。いかにニュースでも何でも上辺しか
見ていないのか思い知ると同時に勉強させてもらっています。
geotechさんの知識の深さ、尊敬です

Re: No title

greenさん、いつもありがとうございます。

>勉強させてもらっています。

少しでもお役に立てれば嬉しいです。
テレビとかは上辺のことが多いですからね。



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