職業人としての父(その六)

 広島に戻った1月15日夜、家族に会社を辞めることになったと始めて告げた。とくに大きな反応はなかった。何でもひとりで決めてきた慣れなのか、それとも私を全面的に信頼していたのかは別として。あくる日から、会社設立の準備をし、2月始めに公証役場に書類を届けに行った。「司法書士の方は?」と係員に咎められた。何でも司法書士を通さずに素人が持参したのは始めてらしい。

 2月8日、記念すべき会社設立の日を迎えた。社名は家族会議で決めた。事務所は当初、自宅のリビングとした。食卓テーブルに電話を1本、それに秋葉原で買ったノートパソコン1台、これが会社の全備品であった。

 支店長時代にアルバイトを使い面倒を見ていたが、そのアルバイトから俺も雇ってくれと懇願された。専門的な知識が全くない彼を雇い入れるのはあまりに無謀であると一端断ったが、彼の情熱に負けた。ところが、あくる日、彼は高校時代の同級生を連れてきた。ひとりで細々やる計画であったが、結局、経理担当の女房と併せて4名の社員での船出となった。

 世の中、バブル崩壊による不況に突入し、絶好のタイミングでの船出となった。仕事もなく降りしきる雨を眺める日々を送っていた矢先、一本の電話が鳴った。支店長時代にかわいがっていただいた県の所長からであった。とりあえず、○月○日の○時に所長室に遊びに来いという内容であった。

 行ってみると、どうやら大きな仕事の現説(現場説明)があったらしく、所長室には大手同業会社の営業マンが勢ぞろいしていた。そんな中、所長は彼らに何とこう言ったのだ。「どこがとっても(受注しても)この男に下請けに出すように.わかったな!」と。所長室から出るとき涙が出るほど嬉しかったが、後に、彼らの反発を買うことになった。「そりゃ、そうだろう、最大手の支店長だったか知らないが、辞めてしまえばただの人間、そんな人間に貢げって言われてもな」という声が聞こえた。

 結局、この仕事は私がいた会社が受注したのだが、後任の支店長が所長の意見に逆らって、私に声をかけないで仕事をしようとした。前にいた会社は県から指名停止となり、二重に迷惑をかけてしまった。
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会社

結構、きよしさんと僕とは似ているところがあるなと、思いました
ま、似ているところと言っても会社の件ですが・・・

僕も会社を今までに何度か立ち上げていますが
すべて、自分ひとりで登録しています
経理もすべて一人でやっています(弥生会計を使っています)

ま、現実問題として、金がないから、司法書士も税理士も使えないのですが・・・
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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