地下汚染の構造

 ユーチューブで毎日のように登場してお馴染みの京大原子炉実験所の小出裕章さんが16日のテレビ朝日の番組に登場し、以下のように発言し、反響が広がっている。

 「東京電力の発表を見る限り、福島原発の原子炉は、ドロドロに溶けた核燃料が、圧力鍋のような容器の底を破ってコンクリートの土台にめり込み、地下へ沈みつつある。一刻も早く周辺の土中深く壁をめぐらせて地下ダムを築き、放射性物質に汚染された地下水の海洋流出を食い止めねばならない」

 小出さんの発言を待つまでもなく、燃料棒がまったく水に浸かってない丸出しの状態にあることからも、メルトダウンからメルトスルーし、格納容器からも漏れ出ているであろうことは容易に想像できる。第一、地下水から高濃度のストロンチウム90が検出している事実ひとつとってみても、格納容器からの漏出は動かぬ証拠である。

 格納容器から漏出した高熱の放射性物質はやがてコンクリートの土台を壊して下方地盤に浸透していくのは時間の問題である。そこで、小出さんは原発建屋を囲むように地下の岩盤まで地下水を通さない遮水壁で囲む「地下ダム」を建設することを提唱している。

 さて、その「地下ダム」であるが、小出さんは岩盤まで到達した遮水壁構造を建設することを提唱している。しかし、岩盤まで到達した構造であればよいという簡単な話にはならない。原子力の専門家であっても、地盤や地下水のことがわかってらっしゃらないようである。

 水というのは当然、上から下に通りやすいコースを選択して移動する。一般に粘土は水を通し難く、砂は水を通し易いのは常識であるが、問題は岩盤である。岩盤がすべて水を通し難いかというとそういうことにはならない。岩盤の地下水は割れ目を介して繋がっていて、圧力バランスにより水位を保っているのである。

 福島原発の地下の地質構造は、一番上に表層があり、その下に粘土層が分布し、さらにその下に岩盤(砂岩)が分布することが予想されている。表層というのは周辺の丘陵地が侵食され堆積したルーズな土砂であるため、地下水を通しやすい。従って、表層を伝わって容易に海に汚染物質が拡散する。次に、粘土層は均質な海成粘土であれば非常に水を通し難い。

 予想される地質構造が図のa)のようであれば、粘土層に少し根入れした遮水壁構造であればまず大丈夫である。すると、今言われている工事費1000億円などかかるはずもなく、本日の株式総会を意識して隠す必要もないのである。粘土で止めていた方が岩盤まで到達した遮水壁よりもむしろ安全だと考えられる。なぜなら、遮水壁を建設すると、どうしても壁と周囲の地盤の間にわずかな隙間ができる。コンクリート壁と粘土層のわずかな隙間を伝わって岩盤の割れ目に浸透する危険の方が大きいからである。

 仮に図B)のように、粘土層の中に水を通し易い砂層が介在している場合は、遮水壁は砂層からの地下水流出を防ぐために岩盤まで根入れしなくてはならない。その場合の費用は概ね1000億円と考えられる。その時、根入れ部分(遮水壁の先端部分)の岩盤状態が大きな問題となる。仮に図c)のように岩盤が断層など開口性割れ目が密集したゾーンを形成していたら、地下水は割れ目ゾーンに沿って容易に拡散することになる。

 いずれににても、遮水壁による地下ダムを計画するにしても、地下の地質構造と透水性を詳細に把握しなくてはならない。そのデータがない限り、適正な工法も工事費も出てこない。そのための調査は今すぐにでもできることである。対策が後手後手になっているひとつの問題点がここにもある。



  図はoriginalであるから他への引用は禁止する。なお、図中のk=という数字は(×1.0)で地盤の透水係数を示し、単位はcm/sec.である。



原発地下構造
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なるほど

きよしさん お早うございます。
成程そう言う事ですか。現役時代のお仕事と関係があるのかもしれませんが大変な知識をお持ちですね。分かりやすいオリジナル図面の制作も敬服します。

Re: なるほど

爺さん、おはようございます。

>現役時代のお仕事と関係があるのかもしれませんが

いえいえ、これでもまだ現役なのです。
会社は減益ですが・・・・


No title

きよしさま、こんにちは
この記事を小出先生の非公式まとめに送ったらいいのではと私は思います。
どうぞそうして下さいませ。

Re: No title

dorucasuさま、こんにちは。

折角のご進言でありますが、
個人的にはそのような直接的な
行動は差し控えたいと思います。

誰かが、こんな記事がありましたよと、
本人に知らせる分には結構ですが。

希望にそえなくて申し訳ありません。
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