父の生い立ちと青春(その三)

 第二の父親がどのような形で我が家に入り込んだのか、私には記憶がない。これまで姉や兄もそのことを話そうともしないし、今となっては、この件は兄弟の間ではタブーである。

 ともかく気がつくと、我々は一時は炭鉱で賑わった隣町に移り、普通だったら幼稚園に通う私をひとり家に残して、母とその男は毎日、行商に出かけた。六歳年上の姉と三歳年上の兄は小学校に逃避した。

 母は毎日、口癖のように私にこう言って行商に出かけた。「お前は高杉晋作の子孫だから、ひもじくても(腹がへっても)人にものをもらっちゃいけないよ.武士は我慢するんだよ」と。

 母親が行商に出かけると、最初の頃、近所のおばさんがちゃんちゃこを着た幼な子に干し柿やお団子を持ってきてくれた。しかしその度に、「高杉晋作の子孫だから」と首を横に振って断った。こんな子供をかわいいとも思わなくなり、次第に、かわいくない子供として相手にされなくなった。

 のちに調べてわかったことだが、どうやら我が家が長州藩の武士の末路らしいことだけは間違いはないらしいが、晋作を持ちだしたのは、貧困に絶えて我慢さすための母の究極の嘘であったであろう。
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