父から娘へのメッセージ(その四)

 娘の命を取り留めるのに、とりあえず大量の輸血が必要になった。運が悪いことに娘の血液型はO型であった。身内は皆、A型であることから、同じO型の血液を採取すべく、会社に戻り頭を下げて回った。幸いにも、数人の方の善意を集めることができて、全く別人の血液に入れ替わった娘は、一命を取り留めることができた。この時こそ輸血の善意を身にしみて感じたが、自分自身も何年か先に輸血のお世話になるとは、この時、知るよしもなかった。

 胎内七ヶ月で生まれた娘は、よくしたもので、ちょうど三ヶ月間入院したのち、退院した。私を含めて身内は、最初、ただただ生きることだけを望んだが、この段になると、ようやく、手と足はちゃんと五本の指がついているか、五体満足なのかと心配しはじめた。そしてそれも大丈夫だとわかり、さらに落ち着くと、今度は人並みの成長を期待した。しかしそんな期待も束の間、退院してしばらくして、定期健診で未熟児網膜症と診断された。

 若い親にとってすべてが耳慣れない言葉であった。名医と評判の女医によると、当時、未熟児網膜症の手術法として光凝固法という新しい方法が日本で普及し始めたとのこと。光で悪い部分を焼く方法の光凝固法が成功すれば目は回復するが、リスクも多い。最悪、失明もあるという。しかし逆にこの手術をしない場合、網膜症は一生ついて回る。この二者択一を迫られて、我々は希望の道を選択した。数時間の手術の末、「うまくいきましたよ.もう大丈夫ですよ」という女医の言葉は天の声にも聞こえた。

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