難しい漢字や言葉

 私は仕事柄、いつも報告書を書いている。報告書というのは地質調査や地質解析の方法・結果・考察をまとめたものであり、お客さん(最終的には国や県)に読んでいただき、わかりやすく理解していただくものである。それゆえ、報告書は基本的に現代当用漢字を使用する。最近ではできるかぎり「ひらがな」を使用するのが一般的である。例えば、「従って」「且つ」「及び」「通り」なども「ひらがな」が原則である。これは学術論文でも同様のルールである。

 文章はわかりやすく簡易にをモットーとしている。起承転結はもとより、句読点の位置やセンテンスの長さなどにも気を配っている。また、読みにくい言葉にはルビをつけて、専門的な難しい言葉には脚注をつけてわかりやすく説明する。朝日新聞の天声人語が文章のひとつの手本となる(これには異論があると思うが朝日新聞党である私の私見)。

 上記はあくまでも報告書という対価のある場合であるので、私的な文章や日記、ブログの類は別である。こうした場合は文章のうまい下手、構成や適用語句など、いわば何でもありで良いわけである。人に読ますとしても、人それぞれの調子でもって伝えればよいのであり、その方がその人のモチーフが出ておもしろい。

 しかしながら、対価のある市場に出回る本となれば、やはり最小限のルールが必要である。叙情的な小説や詩であれば一歩も二歩も譲るが、主張や公論、論文まがいの本ともなれば、やはり読みやすいものにする義務があろう。

 これまで専門書以外の書物を好んで読まない(今までは読む時間がないといった方が正確かも)私であるが、最近になって気になる本をamazonから仕入れては読んでいる。シニアナビの山猫軒さんのブログにあった「街場のメデイア論」(内田樹著、光文社新書)も最近仕入れて読んだ本のひとつである。ところが、ほんの2~3ページの間にも難しい漢字や言葉であふれていた。

 少しだけ例を出すと、以下のようである。 
「遡る」(さかのぼる)-----「溯る」、「泝る」とも書く
「奇矯」(ききょう)なこと----普通と違っていること
「倒錯」(とうさく)-----本来のものと正反対の形となって現れること。
「配架」(はいか)-----所定の排列順序に基づいて、書架上に並べること。
「リテラシー」-----読み書き能力。
「煽り」(あおり)-----あおること。
「使嗾」(しそう)-----人に指図して、悪事などを行うように仕向けること。
「信慿」(しんひょう)-----信用してよりどころとすること。信頼すること。

 これらの漢字や言葉をみるに、何ゆえにわざわざ漢字を使用しないといけないのか、何ゆえにもっと簡易な表現にできないのかと思う。難しい言葉が著者の品位を高め、本の商品価値を高めるとでも言いたいのであろうか。本は読もうとする万民に提供して理解してもらうことが使命ではなかろうか。もしそうでなかったら、本の表紙に難しい漢字知識が必要とか、読者限定条件を示したらどうだろう。
 
 この例に限らず、最近の書物には何ゆえにと思うほど、やたらと難しい語句や表現、カタカナ言葉が目立つ。古典的な小説に始まる小説家の特権意識がそうさせたのだろうか。小説は読める人が読めばよい。理解できる人が理解すればよい。そうした小説家気取りの意識がそうさせているのか。

 私にとっては、大江健三郎の論文よりも養老孟司の論文の方が読みよい。高木彬光よりも松本清張の推理小説が好きである。山口瞳の作品も読みよい。こうした人の作品に共通しているのは気取りがないこと、表現が素朴であることである。一般の読者を常に意識している。本に、むやみに難しい漢字や表現は必要ないのではと、いつも思う。


スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

勉強になりました

geotechさんのブログはとても読みやすくわかりやすい、と思ったのはそういうお仕事をされていたからなのですね。

松本清張、私も大好きです。たぶん、ほとんど読んだかも・・・(若い頃)

Re: 勉強になりました

おしゃれ猫さん、まいどです。

パソ、直りました?

> geotechさんのブログはとても読みやすくわかりやすい、と思ったのはそういうお仕事をされていたからなのですね。

いえいえ、読みやすいかどうかは別です。
理系ですから、客観的にみて、はっきり言って、くどいです。

> 松本清張、私も大好きです。たぶん、ほとんど読んだかも・・・(若い頃)

私もほとんど読んでますよ。

では、またのお越しをお待ちしてます。
プロフィール

geotech

Author:geotech
geotechのブログへようこそ!

団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
blogram投票ボタン
フリーエリア
シニア・ナビ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR