観察力

 地質学を仕事にしているので、露頭を観察することが多い。露頭とは、岩盤などが露出した法面や斜面のことである。露頭を観察することにより、地質の構成や形成史(生い立ち)を知ることができる。若い人に、露頭を観察してきなさいというと、10分も経てば帰ってくる。それじゃだめだと、また行かす。それでも20分もすれば帰ってくる。「だって、もう観察するところもないし」と答える。「ほんとにそうかな?」と言って、最終的には一緒に観察に行って手本を示す。

 最初は遠巻きに露頭の全体像を天下の大勢としてつかむ。そして、おもむろに露頭に近づいて細部を観察する。それをスケッチブックに書きとめる。スケッチブックに書いていると、いろんな矛盾や疑問が彷彿する。そして、スケッチが完成したら、再度、じっとひたすら観察する。1日同じ露頭を見ていたって、私は飽きない。見れば見るほどいろんなことがわかってくる。想像が膨らむ。そうしたら、物語ができる・・・・・・・・・。1億年前の恐竜が行きかう時代に海底で砂が堆積したあと、地盤隆起し、その後火山の噴火の影響を受け、さらに断層活動によって切れ切れになり、縄文海進によって埋没し、新しい堆積物が被い・・・・・といったロマンが展開できる。つまり露頭と対話することができる。

 地質の露頭観察に限ったことではない。目に見えるものであれば、観察により知りえることが山ほどある。観察すればするほどいろんなことがわかる。静物でもよい。風景でもよい。動物や人の表情はもっとわかりやすい。観察することで、目に見えないものまで見えてくることがある。花や果物の鮮度、水分、風景が示す風土の形成過程、動物や人の心・・・・・。

 観察には不思議な力がある。心配な木や花があれば、もっと観察するがいい。心配な動物や人があれば、もっともっと観察するがいい。観察に過ぎるということはない。時として日によって表情が違うからである。化石になった地質にしても、同じ露頭でも晴れの日と雨の日では表情が変わる。晴れの日にカラカラに乾いた露頭も雨が降れば割れ目から湧水する。ポーラスな岩と緻密な岩では濡れ方も違う。化石がそうであるから、まして生き物は表情が日々刻々と変化する。もっと観察すれば、心配なものや心配な人の気持ちもわかろう。そうして洞察力や感性が磨かれよう。そうなれば、目に見えないものまで読めるかも知れぬ。相手の気持ちが理解できないと言っているのは、実は、我々に観察力が足りないのかも知れない。
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同感ですね

geotechさんは、露頭から物語ができるのですね。
私は歴史ある地に住んでいるので、万葉集や古墳・山などからロマンが展開されます。
同じ場所でも、心に余裕のある時とない時とでは景色が変わる。
だからこそ、観察するには心穏やかに・・・と考えています。
「観察力」 私も大事にしたいと思います。

No title

高校生の時に地学部でした。入部の動機は、不純なことでしたが・・
その地学部の同窓会が卒業後初めて、お正月にあります。
みんなジジババでしょう。

姪のムコ殿が広島で地質の仕事してましたよ。
でも、今は山口の方で・・・
知り合いだったりして・・・そんなことはないか!

Re: 同感ですね

まこさん、コメントありがとう。

> 私は歴史ある地に住んでいるので、万葉集や古墳・山などからロマンが展開されます。

そうそう、地質学でもまずその土地の神社仏閣を尋ねることが必要です。
また、このことについてはブログにて。

> だからこそ、観察するには心穏やかに・・・と考えています。

確かに、同じものを見ても心しだいで随分変わりますね。

今後ともよろしく。


Re: No title

かお~るさん、こんにちは。
広島は朝から晴天です。香川はどうでしょうか?

> 高校生の時に地学部でした。入部の動機は、不純なことでしたが・・

そうでしたか。その不純なことが知りたいです。

> 姪のムコ殿が広島で地質の仕事してましたよ。
> でも、今は山口の方で・・・

それって、絶対知ってますよ。だって私は山口出身ですから、山口のその
方面の事情に詳しいですから。
もしよかったら、会社名とか教えてくだされ。

では、また。
今後ともよろしく!



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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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