マイケル・サンデル教授のこと

マイケル・サンデル

 アメリカの建国よりも古い1636年に創立のハーバード大学において、履修学生数が最高記録を更新した授業がある。政治哲学者であるマイケル・サンデル教授による「Justice(正義)」に関する熱血授業である。大学の劇場でもある大教室には、毎回1,000人を超える学生がぎっしり埋まる。あまりの人気ぶりにハーバード大学では、授業非公開という原則を覆して授業の公開に踏み切った。ハーバード大学の授業が一般の目に触れるのは、史上初めてのことである。

 先日、東大・安田講堂において日本で始めての特別講義があり、熱狂のうちに終了した。その後、NHKで特集として大きく取り上げられ、波紋を呼んでいる。なぜ、サンデル教授の講義がすごいのか、彼の魅力について考えてみた。

 サンデル教授は、私たちが日々の生活の中で直面する題材に対して、「君ならどうするか?何が正しい行いなのか?その理由は?」と、学生に投げかけ、活発な議論を引き出し、その判断の倫理的正当性を問うていく。彼の講義は一般の講義とは違う。教員と学生との闊達な対話で授業を進めていく、所謂、ソクラテス方式を採用していることである。

 彼の講義の魅力について、大学教授、学者、学生、一般人などがいろいろな立場から意見を述べている。それら意見の最大公約数は、上からの押し付け講義ではなく、「君ならどう考える?」といった対話方式だという。勿論、サンデル教授による講義の特徴は対話方式(ソクラテス方式)であり、そこが普通の講義と根本的に違うところである。しかし、誰もが、いつ、どこででも対話方式によって成功するとは限らない。対話方式という形態を真似することは容易であるが、成功さすことは容易ではない。対話方式によって、むしろ講義が混乱し、収拾しないことが予想されるからである。

 それでは、サンデル教授の対話方式の講義はなぜ成功するのか。ひとつは政治哲学や倫理哲学をテーマにしているからである。それらの分野においては答えがないといっても過言でないだろう。悩むこと、議論すること、その過程が学問でもあるからだ。対話方式の講義を理系の講義に適用できるかというと、少し疑問である。

 次に、対話方式を成功さすためには優秀な指揮者(コンダクター)が必要である。討論の題材に対して、相反する意見を述べさせる、その意見の問題点を指摘する、相反する意見の根本的違いを追及していく、本題から反れそうになれば軌道修正する、できるだけ具体的な例題で示す、双方の意見の共通点を見出す、無理に意見を集約させない、などである。

 このことは大学の講義に限らず、会社の会議においても、マンションの理事会においても、家族会議においても、井戸端会議においても共通する。大切なことは事の本質を理解した有能な指揮者(コンダクター)がいるかということである。指揮者(コンダクター)は講師であったり、司会であったり、社長であったり、父親であったりもする。そして、何よりも大切なことは指揮者(コンダクター)の人間的な魅力である。日本の大学教授がサンデル教授の講義の魅力を紹介し、ただし自分にはできないと自白する。その根本原因は、指揮者(コンダクター)としての人間的魅力がないからでもある。
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