父から娘へのメッセージ(その二)

 「何よニコニコしちゃって!こんな時、たいがいの親は涙を流すものだよっ!」のちに、結婚式を編集したビデオを見ながら親戚一堂が私を非難した。式場で父親たる私が、終始、笑顔で娘のメッセージを聞いていたからである。

 「式の途中でも花嫁と一緒に、見上げてごらんを三番まで歌っちゃって.花嫁のオヤジってのはこういう時、だいたい後ろの方で静かにしていて、お酒を注(つ)いで廻るもんだよ」と非難が続いた。そういえばそうだ。しかし、別に泣くのを我慢していたわけではないし、無理してはしゃいでいたわけでもない。ただ単に、娘が結婚するのがうれしくて、楽しかったからだけである。

 思い返せば、息子より五歳年上のこの娘が長女として生まれたのは、昭和四十九年の秋のこと。折りしも、名古屋市内は久しぶりにセリーグ・ペナントレースを制した中日ドラゴンズの優勝パレードで沸いていた。高木守道や大島と握手せんとばかり、ごった返す群集の中に私たちもいた。

 紙ふぶきとテープが舞う栄の繁華街は、さながら織田信長の凱旋を思わす名古屋独特の派手さが感じられた。しかしあとで冷静に考えれば、妊娠七ヶ月の妻をパレードに無理やり引きずり出したのが、そもそもの間違いであった。
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