NATMに学ぶ子育て論

 トンネルの掘削工法にNATM工法というのがある。NATMとはNew Austria Tonnel Methodの略であり、訳せば、新オーストリア・トンネル工法となる。アルプスを擁するオーストラやスイスは山岳トンネルのメッカであり、日本は彼らに学んだ時期があった。私もNATMの権威であるオーストリア・チューリヒ工科大学のコバリー博士に学んだ時期がある。

 日本においては、岩盤を掘削したら鋼の支保工を組んで立て、岩盤と支保工の間に板を差し込む工法が一般的であった。しかし、アルプスなど地圧が大きく膨張する岩盤では鋼材が曲がり、トンネル空間が押しつぶされる。このため、地山自体を補強しながら地山の挙動を計測し、計測結果から次なる補強工法を変更しながら進めていく工法(NATM工法)が採用され、現在ではNATM工法が世界標準となっている。日本では中央自動車道あたりから本格的に採用されて20年になる。

 従来工法が鋼に対して鋼で受けるのに対して、NATM工法は地山を補強し地山の状態を伺いながら、補強方法を変更しながら掘り進める方法である。もっとわかりやすく言えば、従来の方法は、力には力で対抗し、当初の方針に沿って最後まで突き進める、やや剛腕な手法である。これに対してNATM工法は、最終的に安全に掘り終えるという目的のために、何段階もチェックして、その都度、より良い方向に変更していくという、柔軟な手法である。

 このNATM工法を支えるNATM理論を応用して、子育ての道しるべを探る。例えば日本においては、幼稚園、小学校、中学校、高校とその年代にあった標準以上の子であって欲しいと教育する。しかしこの場合、教育の目的が何かという点が明確でない。どの段階においても標準以上の優秀な子であることが必要なのか、有名大学に入学させることが最終目的なのか、優良企業に入社させることが最終目的なのか、その目的によって育て方や指導の仕方が違うだろう。

 仮に、20歳の時点で立派な社会人になることを最終目的とした場合を考える。この場合、通して学力におもむきを置かなくとも良い。仮に中学校のときにタバコを吸ったとしても、それ自体あまり問題ではない。多少、軌道修正すればよい。仮に高校のときにお酒を飲んだとしても、さほど気にしなくとも良い。もう少ししたら飲めるようになると諭す程度で良い。それより、挨拶はできているか、ちゃんと目上の人に礼節を尽くしているか、約束は守っているか、こんな社会人としてのイロハをそろそろチェックすれば良い。要するに、その段階、段階で、社会でいう良い子でなくともよいのだ。20歳の時点で立派な社会人になるという最終目的と現在との誤差を時間軸とともに次第になくしてやればよいのである。そして、最終的に立派な社会人の20歳を生み出せばよいのだ。

 それでは、世の親はどのような将来設計で子を教育しようとしているのか。具体的な教育方針のイメージがわかない。漠然と、勉強はできた方がよいとか、漠然と、いい子であったらよい、有名大学や優良企業に入れたに越したことはないとか、ざっと、こんな程度ではないだろうか。ある程度もの心つくまでは仕方ないだろう。しかし、もの心ついて以降は、子と相談しながら子の将来設計を親と子の共同作業で作っていくことが肝心である。この場合、あくまで主役は子である。子の希望を聞きながら子の意に沿って、親としてのアドバイスを加えて最終目的のためのサポートをしていく姿勢が大切である。すなわち、親に必要なのは道しるべと支援である。


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