葬られる事故原因





 博多駅前の陥没事故の放映を見ていて、オヤッっと思った。地下鉄工事にナトムが採用されていたからだ。NATM(ナトム)とはNew Austria Tunnnel Method の略である。アルプス山脈を擁するオーストリアで生まれた画期的なトンネル工法である。


 NATM(ナトム)という言葉の響きは懐かしい。もうかれこれ30年も前のことか、NATM生みの親であるチューリッヒ工科大学・コバリ博士を会社に招いて勉強会を催した。博士は広島の仏通寺がお気に入りであった。先端的な工学博士が竹林の中の侘びとさびを好んだのも印象的であった。


 それまでトンネルといえば鋼製の支保工で支えるのが常識であったが、NATM(ナトム)は地山の挙動を計測しながら工法にフィードバックする柔軟な工法である。この工法によって関越道や上越新幹線などの難工事を乗り越えてきた。そして今ではトンネルといえばNATM(ナトム)と言うほどに常識になってきた。


 NATM(ナトム)は確かに優れた工法であり、山岳トンネルで大きな効果を発揮する。しかしNATM(ナトム)には欠点がある。遮水性である。だから市街地の地下トンネルに採用しているのに驚いた。なぜ一般的なシールド工法や推進工法を採用しないでわざわざNATM(ナトム)を採用したのか。しかも岩盤の起伏が著しい博多駅前で。遮水性をどのように保ったのか。幸いにも死傷者がでなかったものの、大惨事を招きかねない大事故に謎が深まるばかりであるが、不思議なのは施工業者の名や施工の詳細、原因について誰も語らないことである。猛スピードで陥没を埋め戻したように、原因も葬られているように思えてならない。




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元凶は建築家の奢りにあり






 横浜のマンションが傾いた事件のとき、私は拙ブログにおいて建築と土木の歪な関係が根本にあると訴えた。


2014年6月10日------------http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-743.html
2015年10月15日----------http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-826.html


 今回の豊洲の件についても根本原因がそこにあると確信する。一般の人にはわからないかも知れないので、建築と土木の関係について少し説明する。


 マンションや今回の豊洲市場などの建築物を扱う技術者は、「上物(うわもの)」と呼ばれる建築物本体の設計に携わる技術者(一級建築士)と基礎を扱う技術者(技術士)に分かれる。所謂、前者が「建築屋」であり後者が「土木屋」である。建築屋は難しい構造計算をこなせる構造屋としてのプライドがある。一方、土木屋が取り扱うのは地盤の他に、環境、地下水など多岐に渡り、構造物の安全性の基礎は我々が担うというプライドがある。しかし社会の評価は一般に建築屋の方が高く、建築屋の独壇場になることもしばしば。極端な話、土木屋から上げられた基礎に関するデータを無視して建築屋が設計していることを私は日常的に見てきた。


 今回の豊洲の建物地下空間の問題を聞いたとき、ははぁ~、これだなとピンときた。誰がいつ決めたかと犯人探しをしてもそれはおぼつかないだろう。専門委員会の提言のもとに土木屋が決めた盛土案を、建築屋がいとも簡単に修正して進めてきたものと考えるのが妥当である。


 建築と土木の意思疎通というか歪な上下関係。建築と土木を総括する組織のないこと。さらに全体を監理するトップがいなことが原因である。今回の豊洲市場の大問題は、建築屋の奢りが招いたとんでもない負の遺産と睨んでいる。




熊本が教えるもの






 熊本地震が起きたから言うのではない。私は前々から活断層と地震予知に関して辛辣な意見を投じてきた。地震予知などできる訳がない、地震予知は寓話かパズルのようなもの、活断層論議は無意味である、地震学者は要らない、などと。3.11東日本震災以降、地震と活断層に関して投じた意見の主なものは以下のとおりである。


2012年12月14日----------------------無意味な活断層論議
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-638.html

2012年11月05日----------------------再び活断層について
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-620.html

2012年10月24日----------------------禁固刑6年の波紋
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-614.html

2012年05月02日----------------------無知の知
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-551.html

2012年04月26日----------------------活断層論議、どっちもどっち
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-548.html

2012年04月25日----------------------100キロ圏の根拠
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-547.html

2012年04月23日----------------------狼少年
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-543.html

2012年04月03日----------------------科学における専門の馬鹿と壁
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-526.html

2012年03月29日----------------------活断層論議
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-523.html

2012年03月19日----------------------「余震」と「予震」
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-517.html

2012年02月01日----------------------巨大地震は起きるのか
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-484.html

2011年06月14日----------------------3.11に海底で何が起きたのか
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-314.html

2011年05月09日----------------------再び、地震予知について
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-283.html

2011年04月12日----------------------余震論議Part3
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-264.html

2011年04月11日----------------------余震論議Part2
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-263.html

2011年04月08日----------------------余震論議に異議あり
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-262.html

2011年03月28日----------------------地震学者は要らない
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-253.html



 あれだけ声高に、迫り来る南海・東南海・東海地震の脅威を熱く語っていた地震学者たちは今、どこに散在し、鳴りをひそめたのか。それはそうでしょ。誰ひとりとして熊本を予言していないのだから。大きな顔して人前に出れる訳がない。連日の気象庁課長の記者会見は空しい。「活発な地震が広域で続いている」?そんなのわざわざ言わなくてもみんなわかっている。「十分に注意してください」?言われなくても注意している。一体、何を言ってるのか、全く要領を得ないし、説得力もない。むしろ彼は人前に出れない地震学者たちの生贄と思えてならない。


 大自然の脅威の前に人類は無力だし、何もわかっていないのだ。それなのに、わかったように立ち振る舞う。地震の予知は可能なのだと言い張る。そればかりか、今後何年間に大地震が起きる確率は云々と、平気で数字を並べる。そしてその嘘ぶいた数字を根拠に地震対策だと膨大な国費を投じる。何だかこの国はおかしいぞ。もっと我々は自然の前に謙虚になり、畏敬の念をもって当たらねばならない。何もわかっていない。無知の知こそ地震研究の再出発の精神であって欲しい。




横浜マンション事件に警告





 横浜のマンションにおいて沈下に伴う変状が発生し、その原因が地盤調査の不足と偽装にあることが判明した。この事件、私としては別に驚かないでいる。むしろ氷山の一角であると確信する。というのは、地質を扱う場末の私のところにもマンション建設に伴う地盤調査の報告書作成の依頼があり、長年の経験からそう思うのである。

 通常、長方形のマンション1棟を建設する場合、よほど地盤条件が面的に変化がないことが事前にわかっている場合を除いて、マンションの4隅に1箇所ずつ、計4本の地盤調査を行う。しかし、4本の地盤調査があった記憶が少ない。毎回、本数が不足して解析困難との忠告をするが梨の礫である。

 ということで緊急に、私が扱った最近のマンションをチェックしてみた。結果はA~Nの14棟のマンションのうち、地盤調査を4本実施しているマンションは1棟であった。平均では1.6本の地盤調査しか実施していない。つまり、マンション1棟に対して1本の地盤情報を4隅にまで展開しているマンションが多いのである。

 


地盤調査



 勿論、水平方向に地盤の変化が少ない場合はそれで難を逃れているだろうし、建設時に杭の入り方によって施工変更したものもある。しかし、基本的に地盤調査の数が不足しているのである。

 安価なマンションを建設して完売するための手立てとして、最も削り易く、しかしながら最も重要で基礎的な地盤調査を削除した結果である。建設許認可時にこれをチェックするシステムもなく、発覚しても処罰はないから、野放しとなる。

 他のマンションについて総点検を実施するらしい。しかし仮に問題が発覚しても、法的にも実務的にも完全に建替えることは不可能である。今既にマンションを購入していて変状が発生している場合は、管理組合を通じて建設時の地盤調査の詳細を請求・閲覧すべきである。また、これからマンションを購入する予定の方は、適正な地盤調査が行われているかどうか審査すべきである。場合によっては私が無償で協力することはやぶさかでない。





ドローンへの思い






 今、何かとお騒がせのドローンであるが、私にとってドローンの出現は感慨無量の思いでいる。というのは、私の仕事の中には、切り立った断崖斜面を観察したり、災害直後の斜面を調査したり、広大な地すべり斜面を調査することが多々あり、そんな場合、鳥の如く飛んでつぶさに見れたらどんなにいいだろか、そんな思いがずっとずっと焦がれてきたからである。

 そんな願いから、鳥になって山から山へとすいすいと飛ぶ、そんな夢を常々、何度も見てきた。現実には相当危険な斜面を恐る恐る登ることもあるが、断崖絶壁の場合はプロのロッククライマーにお願いする。といっても、所詮は人任せでやるせない。




クライミング



 どうしても岩壁を真近に見たいとの思いから、20年前、泥臭いひとつの試みを行なった。高価なラジコンを買う資金はなく、さりとてゆっくり考えている暇もない。だったらと、ゴミ袋気球なるものを試作した。

 家庭用ゴミ袋にヘリウムを吸入して閉じた気球にカメラを搭載し、糸をつけて下からカメラ操作するものである。安価で手軽なのだが難点が多い。カメラの向きまで操作できないし風に左右される。そこで早朝の凪(風がぴたりと止む一瞬)を狙って気球(ゴム袋)を浮かせて写真を撮りまくる。この方法で使える岩壁の写真数枚から立体画像を作成して、それをもとにスケッチした。

 そのときの苦労からすれば、ドローンは夢のような機器である。比較的安価に手に入り、風に関係なく好きなときに飛ばせる。それも垂直に飛び立って水平移動できる。まるでオスプレイの模型版のようである。これだと垂直に切り立った岩壁のスケッチも可能だし、災害発生直後の現状確認もできる。

 実際に、昨年起きた広島土砂災害においては、ドローンが災害直後の画像を空から送信し大活躍をした。GPSや赤外線の搭載によって、遭難者の捜索、災害の規模算定、測量図と用途はさらに広がる。さらに馬力が増えることで、緊急物資の輸送へと用途が広がり、ドローンの可能性は留まるところを知らない。
 
 ドローンを飛ばすことに対する規制がない現状、ドローンによる事故が問題になっている。しかし、ドローンによる夢の実現を阻害することがないようにしてもらいたいものである。過日、純国産飛行機YS11が復活した。ドローンから宇宙船へと、空への男のロマンは果てしない。





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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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