自身の命を守るということ






 このたびの西日本の豪雨災害は、全国各地で甚大な被害をもたらした。とくに私が住む広島県においては、死者・不明者合わせて100人を超す激甚災害となった。亡くなられた方とそのご家族に祈りを捧げる。今は、被害に遭われた方々の一日も早い日常回復を願うばかりである。その上で、言わなければならないことがある。炎上覚悟で、あえて今、言いたいことがある。


 異常気象といえば異常気象である。しかし命を失うことを、異常気象のせいにできるものだろうか。広島の豪雨災害といえば、4年前の安佐北区の土石流災害がまだ記憶に新しい。そのときもこのブログで指摘した。昔の土石流堆積物の上に宅地開発が進められ、とどめは山麓の奥地の沢の出口まで開発が進められ、その新興開発地を中心に被災したと。


 今回の被災地をみても同様である。岡山県真備町の大規模な決壊被災地。高梁川の支流であるこの区間は、昔から浸水被害を繰り返してきた箇所である。そのことは地域住民も重々、承知していたはず。斜面崩壊箇によって流された家屋が多かった。その多くが過去に近隣で崩壊を繰り返した箇所や旧崩壊斜面が多い。別に専門的知識は要らない。斜面の裾は崩壊のリスクがあり、河川の近くは浸水のリスクがあるのは当然である。ましてや今は、ハザードマップで危険な地域は公表されている。気象は「異常」かも知れないが、すべての自然災害は「偶然」ではなく「必然」なのだ。


 「ここに移り住んでもう30数年になるが、こんなことは初めて」「幼い頃からこの地にいるが、安全だと信じてきた」といった感想は、悠久なる自然の猛威の前では、単なる個人の妄想に過ぎない。


 「冷酷なことを言う」と思うであろう。また、「そうはいっても、現実には移り住むわけにはいかないのだ」と言うであろう。「故郷を離れるわけにはいかないのだ」とも言うでしょう。諸々理由はあるでしょう。しかし考えてもみなさい。命より大切なものはあるのでしょうか。自身と家族の命を守るということがどれだけ大切であり、そのためにはどこに居を置くか、今一度、真剣に考えて欲しい。ひとごとではなく、自身のこととして真剣に考えて欲しいのです。




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ブロック塀は脆い






 今日朝、大阪北部を襲った地震による被害が次第に詳らかになってきた。震源地は有馬高槻断層帯と生駒断層の延長線がクロスする辺りである。



震源地
(写真は自作)

 有馬高槻断層帯も生駒断層も、その活動性の議論の部会作業に携わってきた経験があり、とくに有馬高槻断層帯は400年も活動していないことから学者から蔑ろにされていたので、それみたことかとの思いでいる。仮に、今回の地震が有馬高槻断層帯の中の断層の活動によることが明らかになったなら、有馬高槻断層帯の別の断層、さらには周辺の断層を刺激する可能性は十分にあり、今後、余談を許さない事態となる。


 そのことはさておき、ここではこの地震により小学生が壁の倒壊によって亡くなった痛ましい被害について議論する。小学校のプールを囲む壁の倒壊であり、倒壊後の写真を見ると、中央付近から上の部分が真っ二つに倒壊している。


倒壊前
(写真はネットより引用)


 倒壊前の写真を見ると、高さ3.5mの上1.6m部分が嵩上げされたのがわかる。以前は低い壁とフェンスであったものを、プールから目隠しするために嵩上げされたと考えられる。問題は元の壁と嵩上げの壁の間の接合が認められないことである。通常は鉄筋を入れて上下を接合するが、上に重ねただけの構造とみられる。



倒壊前
(写真はネットより引用し編集したもの)


 仮にこれが事実とすれば、耐震上の構造として問題があるばかりか、最も安全であるべき通学路沿いに危険因子があったことに刑事的な違法性は問われないのかという点である。阪神淡路、東日本、熊本の地震においても壁の倒壊による死者は多い。その多くが嵩上げによる構造的な欠陥によるものである。正確な地震予知も完璧な地震対策もおぼつかない現状ではあるが、欠陥構造の壁の倒壊被害を回避することは、今すぐにでもできることである。



葬られる事故原因





 博多駅前の陥没事故の放映を見ていて、オヤッっと思った。地下鉄工事にナトムが採用されていたからだ。NATM(ナトム)とはNew Austria Tunnnel Method の略である。アルプス山脈を擁するオーストリアで生まれた画期的なトンネル工法である。


 NATM(ナトム)という言葉の響きは懐かしい。もうかれこれ30年も前のことか、NATM生みの親であるチューリッヒ工科大学・コバリ博士を会社に招いて勉強会を催した。博士は広島の仏通寺がお気に入りであった。先端的な工学博士が竹林の中の侘びとさびを好んだのも印象的であった。


 それまでトンネルといえば鋼製の支保工で支えるのが常識であったが、NATM(ナトム)は地山の挙動を計測しながら工法にフィードバックする柔軟な工法である。この工法によって関越道や上越新幹線などの難工事を乗り越えてきた。そして今ではトンネルといえばNATM(ナトム)と言うほどに常識になってきた。


 NATM(ナトム)は確かに優れた工法であり、山岳トンネルで大きな効果を発揮する。しかしNATM(ナトム)には欠点がある。遮水性である。だから市街地の地下トンネルに採用しているのに驚いた。なぜ一般的なシールド工法や推進工法を採用しないでわざわざNATM(ナトム)を採用したのか。しかも岩盤の起伏が著しい博多駅前で。遮水性をどのように保ったのか。幸いにも死傷者がでなかったものの、大惨事を招きかねない大事故に謎が深まるばかりであるが、不思議なのは施工業者の名や施工の詳細、原因について誰も語らないことである。猛スピードで陥没を埋め戻したように、原因も葬られているように思えてならない。




元凶は建築家の奢りにあり






 横浜のマンションが傾いた事件のとき、私は拙ブログにおいて建築と土木の歪な関係が根本にあると訴えた。


2014年6月10日------------http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-743.html
2015年10月15日----------http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-826.html


 今回の豊洲の件についても根本原因がそこにあると確信する。一般の人にはわからないかも知れないので、建築と土木の関係について少し説明する。


 マンションや今回の豊洲市場などの建築物を扱う技術者は、「上物(うわもの)」と呼ばれる建築物本体の設計に携わる技術者(一級建築士)と基礎を扱う技術者(技術士)に分かれる。所謂、前者が「建築屋」であり後者が「土木屋」である。建築屋は難しい構造計算をこなせる構造屋としてのプライドがある。一方、土木屋が取り扱うのは地盤の他に、環境、地下水など多岐に渡り、構造物の安全性の基礎は我々が担うというプライドがある。しかし社会の評価は一般に建築屋の方が高く、建築屋の独壇場になることもしばしば。極端な話、土木屋から上げられた基礎に関するデータを無視して建築屋が設計していることを私は日常的に見てきた。


 今回の豊洲の建物地下空間の問題を聞いたとき、ははぁ~、これだなとピンときた。誰がいつ決めたかと犯人探しをしてもそれはおぼつかないだろう。専門委員会の提言のもとに土木屋が決めた盛土案を、建築屋がいとも簡単に修正して進めてきたものと考えるのが妥当である。


 建築と土木の意思疎通というか歪な上下関係。建築と土木を総括する組織のないこと。さらに全体を監理するトップがいなことが原因である。今回の豊洲市場の大問題は、建築屋の奢りが招いたとんでもない負の遺産と睨んでいる。




熊本が教えるもの






 熊本地震が起きたから言うのではない。私は前々から活断層と地震予知に関して辛辣な意見を投じてきた。地震予知などできる訳がない、地震予知は寓話かパズルのようなもの、活断層論議は無意味である、地震学者は要らない、などと。3.11東日本震災以降、地震と活断層に関して投じた意見の主なものは以下のとおりである。


2012年12月14日----------------------無意味な活断層論議
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-638.html

2012年11月05日----------------------再び活断層について
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-620.html

2012年10月24日----------------------禁固刑6年の波紋
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-614.html

2012年05月02日----------------------無知の知
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-551.html

2012年04月26日----------------------活断層論議、どっちもどっち
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-548.html

2012年04月25日----------------------100キロ圏の根拠
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-547.html

2012年04月23日----------------------狼少年
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-543.html

2012年04月03日----------------------科学における専門の馬鹿と壁
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-526.html

2012年03月29日----------------------活断層論議
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-523.html

2012年03月19日----------------------「余震」と「予震」
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-517.html

2012年02月01日----------------------巨大地震は起きるのか
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-484.html

2011年06月14日----------------------3.11に海底で何が起きたのか
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-314.html

2011年05月09日----------------------再び、地震予知について
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-283.html

2011年04月12日----------------------余震論議Part3
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-264.html

2011年04月11日----------------------余震論議Part2
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-263.html

2011年04月08日----------------------余震論議に異議あり
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-262.html

2011年03月28日----------------------地震学者は要らない
http://geotech.blog134.fc2.com/blog-entry-253.html



 あれだけ声高に、迫り来る南海・東南海・東海地震の脅威を熱く語っていた地震学者たちは今、どこに散在し、鳴りをひそめたのか。それはそうでしょ。誰ひとりとして熊本を予言していないのだから。大きな顔して人前に出れる訳がない。連日の気象庁課長の記者会見は空しい。「活発な地震が広域で続いている」?そんなのわざわざ言わなくてもみんなわかっている。「十分に注意してください」?言われなくても注意している。一体、何を言ってるのか、全く要領を得ないし、説得力もない。むしろ彼は人前に出れない地震学者たちの生贄と思えてならない。


 大自然の脅威の前に人類は無力だし、何もわかっていないのだ。それなのに、わかったように立ち振る舞う。地震の予知は可能なのだと言い張る。そればかりか、今後何年間に大地震が起きる確率は云々と、平気で数字を並べる。そしてその嘘ぶいた数字を根拠に地震対策だと膨大な国費を投じる。何だかこの国はおかしいぞ。もっと我々は自然の前に謙虚になり、畏敬の念をもって当たらねばならない。何もわかっていない。無知の知こそ地震研究の再出発の精神であって欲しい。




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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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