一年の計



 数年前まで、会社の若い技術者に、毎月A4一枚の目標達成表を提出させていた。月の初めに、個人の意思で今月の目標設定を書いてもらう。目標は自己研鑽に繋がることなら何でもいい。ただ、できるだけ具体的に書いてもらう。例えば、少なくとも学会誌の目次とabstractには目を通すとか、どの専門書の何ページまで読むとか、あるいは仕事の効率を上げるため具体的にどのようにするとか。会社のことでなくてもいい。個人が研鑽できることであれば何でも良しとした。そして月の終わりに、目標が達成できたどうかを書いてもらう。達成できなかった場合は、その理由も書いてもらう。

 そんなことを数年やっていると、できる子とできない子が色濃く選別されてくる。かなり優秀な子は、できるだけ目標を高いところにもっていき、かなりのところまで努力したがあと一歩で目標達成できなかったなどと報告する。普通にできる子は、確実にできそうな目標を立ててそれを実行達成する。そして、できない子はそもそも目標が具体的でない。そして毎月、達成できなかった同じ言い訳を繰り返す。

 できる子、できない子と区別したが、実際には、できるできないが問題なのではなく、やる気があるかないかの意識の問題である。自己研鑽を目的にしているのだが、真の目的は自己研鑽の姿勢を正しているのだ。しかし、できない子は最初から逃げの姿勢で取り組み、目標設定した時点で、既にできない言い訳を考えている。

 できる子もできない子も、優秀な人も凡人も、人間という者はみな、元来、等しく怠け者である。怠け者の自分を正すには、自分で自分を追い込むしかない。嫌なものにどう立ち向かうか、苦手なものにどう取り組むか、プレッシャーにどう対処するか、できるだけ窮地に自分を追い込んでこそ、人は進化するのだろう。

 本田圭佑選手がイタリア1部リーグ・セリアAのACミランに移籍した。そのこと自体が仰天するほどのビッグニュースである。しかし、さらに驚かされたのは、本田選手が名門クラブのキャプテンナンバー10を要求したことである。彼はさらに自分を窮地に追い込み、プレッシャーを与えているのだと思う。

 人それぞれに、目標設定はさまざまであっていい。日常的な行為から趣味の世界、高望みのものまで。それぞれの年齢や力量、置かれた環境によって、手が届きそうなものを選べばいい。問題は、明確な目標を持つことである。

 さて、年の初めに、私も明確な目標を日記の最初のページに書こう。ともすれば体力の減退や気力の衰えを感じ易いこの年齢においてこそ、目標は大切なのだと思う。何を隠そう、私はこうして書くことによって自身を鼓舞し叱咤しているのです。目標に向かって、今年もはつらつと、一歩一歩、一日一日を大切に生きていこうと思う。ちなみに今日は休肝日。この目標こそが、私にとって一番苦しいことなのです。






フク
(写真は今が旬のフク刺しです〔山口では「河豚」を福を呼ぶ「フク」と言います)〕



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