燕の恩返しと鳩の怨念






 この季節、今年も燕がわが家に戻って来た。毎年、ガレージの天井の角っこの同じ場所に巣を作るのだが、昨年は風が強くて、作っては落っこち貼っては剥がれて、最後まで不完全な巣であった。


 そのせいか、今年はその不完全な巣を見廻って、修繕して使えるものかどうか点検しに来ている様子である。さながら、地震による被害家屋の赤紙、黄紙の判定のように。燕が家に寄り付くと幸運を運ぶと言われる。さして幸運はないが、こうした平穏な日常を過ごせるのも燕のお陰かも知れない。







燕の巣





 昔、単身赴任していた頃、マンションのベランダに無数の鳩が寄り付き、ベランダの床は日を追うごとに鳩の糞で埋め尽くされた。鳩害対策として、忌避剤の散布、防鳥ワイヤー、防鳥ネットなどベランダ全体をネットで覆ったがあまり効果はなかった。


 いよいよマンションを引き払うとき、ベランダに埋め尽くされた糞とともに、出たばかりの卵も処分した。それからしばらくして、原因不明の高熱が続いてなかなか治らなかった。いろいろ検査した結果、鳩菌が原因であることがわかった。


 燕には燕の、鳩には鳩の、人には人の、それぞれに大切な命があって、それぞれに大切な命を互いに守りあってこそ、命が引き継がれているのだなぁ。燕が飛び交うこの季節になると、過去の殺生の戒めとともに、生きとし生けるものの命の大切さを痛感するのである。






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死の淵にて



 私には6歳上の姉と3歳上の兄がいる。まだ私が高校生の頃、姉は極貧の生活から逃げるように嫁いだ。兄もまた、高校だけ出て逃げるように家を出て就職した。残された末っ子の私だけが極貧の館に人質のように取り残された。進学校に通っていたが大学進学はとっくに諦めていた。が、そこに姉と連れの義理兄が救いの手を差し伸べてくれた。そのお陰で大学に進学することができた。いわば、姉と連れの義理兄は命の恩人とも言える。

 その姉が再入院し、容態が思わしくないとの知らせを受けた。先天的な心臓欠陥に加えて肺炎を患い、自分の力で呼吸すらできない状態で一端は退院したものの、さらに悪化して再入院となり、すぐにICUに入ったという。駆けつけたときに既に意識はなく、ほとんど植物人間状態であった。

 今夜くらいが山ですとの医師の説明を冷静に聞くことができた。私としては、前回の入院時によく話をして別れを済ませたという思いがあるからだ。それでも愛おしくてやるせない。酸素が吸入される口元で「お姉さん、来たよ!お姉さん、来たよ!・・・・・・」と何度も叫んだ。すると、姉の目から大粒の涙が出た。

 それから、山口の病院と広島、片道2時間半の往復を毎日繰り返した。脳梗塞と腎臓病の合併症が加わり、心拍量150、血圧は上が40下が20の日々が続いた。私の娘が無鉄砲にも3歳の孫を連れて新幹線で病院に駆けつけたとき、血圧は測定不能まで低下していた。私の孫の小さな顔全体が塞がるほどのマスクを着用してICUに入って病床に寄り添ったその時、驚くことに、血圧が80まで回復したという。

 姉の一人娘は入院したその日に東京から駆けつけ、そのままずっと看護していた。姉の旦那とともにほとんど一睡もしない状態のふたりの看護は1週間近くで限界に来ていた。私の兄は娘が乳癌の手術をするので、その後の日程に気を揉んだ。私もまた落ち着いて仕事ができずに気を揉む日々が続いた。

 姉には孫の男の子ふたりがいる。その孫が東京から駆けつけた。そして孫たちが東京に戻ったその日の夜、思いを遂げたかのように、姉は息を引き取った。

 憔悴した姉の旦那に代わって会葬者への挨拶を行い、無事、葬儀を終え、昨日、帰ってきた。意識がなくても、あたかも周囲の言葉が聞こえているかのような反応や体の異変。あたかも死にどきを自身で決めているかのような最期。科学では到底、説明できない幻想的な死の淵を見た思いである。





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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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