アベノミクスの真価




 私の仕事および同じ業界は公共事業と直結しているので、国の公共事業予算の大小によって真っ先に景気の影響を受ける。小泉政権からの公共事業の大幅な削減によって業界は苦戦し、大手企業といえども倒産の憂き目にあうのが不思議でない時代に突入している。ましてや、私のような末端のそのまた末端の零細においては、仕事そのものが激減する一方、元請からの単価も下がるダブルパンチを受けて瀕死の状態である。

 加えて、2年前の原発事故により、これは私自身の道徳的信条から原発事業から撤退する決断をしたことが経営悪化に拍車をかけた。事業の縮小を計り、新たな別の仕事の方向性を模索し、さらなる能率向上と品質向上に励む2年間であった。2年間の赤字決算を経て、ついには無給の役員を通してきた。その甲斐あってか、今期の決算では雀の涙ばかりではあるが黒字決算になりそうである。

 ところが、このところやけに仕事が忙しい。正確にいうと、昨年の解散・総選挙を節目に状況が一転した。昨年の夏から秋にかけて、どうしようもなく暇であったのが嘘のようである。この仕事の忙しさは、株価上昇や円安移行ともピッタリ連動している。忙しいことは必ずしも経営良化にはならないが、ともかく停滞するより動くことの方がましである。

 安倍政権はこう明言した。デフレ経済を克服するためにインフレターゲットを設定し、これが達成されるまで日本銀行法改正も視野に、大胆な金融緩和措置を講ずると。これが所謂、アベノミクスである。

 ただ、今のところ安倍さんが実際に何をやった訳でもない。ほとんど何も実行していないのである。なのに、なぜなのか。なぜ株価上昇をもたらせ、円安移行に転じたのか。ローカルな話では、私の身の廻りでもこうも仕事が忙しくなるのか。

 つくづく、市場経済は生き物であり、この生き物は気分次第であることを痛感する。アベノミクスという御言の奉納によって、期待する信者が連鎖的に増殖し、そのことが日本経済を底上げしている。そんな感じがする。

 ただ、この景気浮揚感は心もとないものである。これはいわば実態経済ではなく、虚構経済と言える。逆に、打つ手を間違えると本当にインフレへ陥落するリスクを伴う。現に、ガソリンや食料品がジワジワと値上がりしてきている。

 金が出回り、株価が上昇し、円安が進む。それと同時に、庶民がお金を使い会社が設備投資しなければ、元の木阿弥となる。結局は金が廻らないとアベノミクスは失敗となる。期待は疑心暗鬼に容易に変貌する。

 折角のアベノミクス信奉の気運を確実な実体経済へと活かすために、日銀総裁人事に始まる具体的な政策に期待するばかりである。私のような末端の仕事が忙しいとか忙しくないとかはどうでもいい話である。日本経済が活力をもって再生することに期待するものである。




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世界恐慌の不安



 日本の国会が相も変わらず何も決定できず、何も進展しない中、世界情勢は刻一刻と大きく変化している。最近の株価続落と円高続行に、世界同時不況の波がしたしたと押し寄せてくるのを感じる。今、私が最も心配するのは節電のことでも沖縄のことでもない。世界経済の行く末である。

 世界で今、何が起きているのか。キーワードは「反緊縮財政」である。ギリシャでは「反緊縮財政」の世論を受けて選挙をしたものの「反緊縮財政」の連合政府が実現できずに、再選挙することが決まった。フランスでは「反緊縮財政」のオランド新大統領が誕生した。これによって、ドイツとフランスによるギリシャ支援の枠組みに影を落とす。さらに、スペインやイタリアでも「反緊縮財政」のストライキやデモが起きている。

 おおらかなヨーロッパの国民にとって、緊縮財政にそろそろ嫌気が差した表れが読み取れる。最も危惧するのは、ギリシャの行く末によっては世界経済が一転することである。再選挙の結果、仮にギリシャがユーロから離脱することになれば最も悪いシナリオが予想される。

 ギリシャがユーロから離脱すれば、旧通貨のドラクマが復活する。しかし、信用を失ったドラクマの暴落は必至である。そうすると、ギリシャ国内は超インフレの混乱状態となり、外国からの借金がさらに膨張する。銀行の機能不全、倒産や失業のさらなる増大、政府の債務不履行宣言、行政サービスの停止へと進展し、ついにはギリシャという国の滅亡へ繋がる。

 今、世界はマクロ経済で連鎖する。ギリシャのユーロ離脱は、同時にスペイン、ポルトガルなどの南欧諸国への波及を意味する。ユーロにもドルにも円にも影響が及ぶ。ギリシャがユーロ離脱すれば日本のGDPは4.1%押し下げると言われている(大和総研)。ギリシャ経済に端を発した世界経済の失速は、世界恐慌への可能性をも示唆する。

 もっとも当のギリシャ人は能天気のようである。もともと遊び好きで楽天的な国民性のギリシャのことである。最も伝統的なこの国を世界が見離すはずがないと、高をくくっているようである。

 それでは日本人は違うのか。1000兆もの借金があっても、どうにかなると思っているふしがある。世界情勢よりも国内問題にばかり目をやっている。日本人もギリシャ人と同じく、ある意味、能天気なのかも知れない。このままでは、日本は世界経済のうねりの中に埋没すること必至である。

 内向きな視野の狭い政治から脱却して、世界に向けた発信が欲しいところだが、望むのが無理というものか。それにしても、昨日発表された仏・オランド新大統領が指名した内閣大臣。その半数を占めたのは、さまざまなキャラクターの女性大臣の面々である。日本の古い顔の政治家の面々とは対照的である。改めて日本の古い政治体質を感じる。



経済のかすなな光明


 円高にデフレスパイラルの日本経済。世界に目を転じても、ギリシャの破綻、イランの政情不安、石油供給の不安定、アメリカとヨーロッパの雇用情勢の悪化、ユーロを初めとする金融機関の格下げなど、世界も日本も、今、経済の底にある。

 そんな中、ここにきて経済のかすかな光明を感じる。円安が数日間続いている。東証1部の株価が持ち直しの傾向を示す。東証2部は連騰している。ニューヨークでは、男性物のバッグやアクセサリーが3倍も売れるという珍現象が出てきているらしい。

 身の廻りでもそれを肌で感じる。建設関連サービス業という仕事柄、経済情勢を一番先取りして感じる。ここにきてマンションの建設に活気が出てきた。全国大手のマンション不動産会社であった○○不動産が一時は倒産したが、最近また復活してきている。自分が手掛けたマンションの販売が華々しく新聞広告にデビユーしている。不動産販売の活況を感じる。震災特需に刺激されてか、土木建設工事が少しずつではあるが活気を取り戻している。

 少し前、日銀がインフレ容認とも取れる発言をして財政出動したことも、大きな要因となっている。経済というものは魔物であり、不安が払拭されて自信が回復すれば、すぐに回復する。逆もまた真なり。一寸先は闇でもある。すべては精神状態によるところが大きい。

 このかすかな光明は不確実であり、か細いものである。しかし、何とかこの光明を大切に育てて、デフレを脱却したいものである。そう切に願う。そのためには、日本も世界も経済復活のさらなる覚悟と自信を発信することが何よりも大切である。経済とは精神力と忍耐力である。




オリンパス社長解任劇の真相


 オリンパスの外国人社長としてマスコミの注目を浴びたマイケル・ウッドフォード氏。その彼が、CEO兼任からわずか2週間後に解任された。この解任劇は、過去の買収案件に巨額損失があることを彼が突き止めたことに端を発する。社長就任からわずか数カ月後のことである。その後、彼は会長他の経営陣と対立を深めていき、辞任に追い込まれた。

 この解任劇の真相について、日経ビジネスの記者が本人とのインタビューに成功した。以下、日経ビジネスによる記事を引用する。

 10月20日、午前11時30分、記者はロンドン中心街のホテルで彼の到着を待っていた。2日前、彼から取材を受けるというメールが届いた。電話で連絡を取ると、彼は興奮した声でこうまくしたてた。  「身の危険を感じているから、とにかく詳しい話をして真実を世に広めたい。電話より会ってじっくり話したい。」  そこで飛行機に飛び乗ってホテルの一室で待った。約束の時間から30分が過ぎていた。本当に現われるのか不安がよぎったその時、大柄な英国人(マイケル・ウッドフォード氏)が姿を見せた。  「すみません。朝8時からメデイアの取材が続いていたので腹ペコだから、食事を取っていい?」  そう言うと、ステーキサンドを注文し、ついに2時間のインタビューが始まった。

 マイケル・ウッドフォード氏談
 『まず、問題として指摘したいのは、英医療機器メーカーのジャイラス買収の件だ。2008年に、オリンパスが20億ドル(当時の為替レートで約2000億円)を投じて買ったことは知っていた。私は当時から、「買収価格が異常に高い」と批判的だった。それは社内の多くの人が知っていることだ。

 でも、そのことはまだいい。問題は、買収後に買収価格の3分の1に当たる6億8700万ドル(約520億円)もの手数料を財務アドバイザー(FA)に払っていたことだ。これは全く知らなかった。しかも、支払った相手は、英領ケイマン諸島にあるAXAM(アクザム)という会社などで、実態はいまだに誰も分からないという。そんなことが許されるわけがない。

 すべては、雑誌「ファクタ」8月号に載った記事が始まりだ。あれがなければ、私は今でも何も知らないまま社長を続けていただろう。

 その記事には、2006~08年にかけて買収した国内3社のことが記されていた。医療関連の産業廃棄物処理を手がけるアルティス、電子レンジ用容器を企画・販売するNEWS CHEF、化粧品を通信販売するヒューマラボの3社で、そこに合計700億円ものカネを投じていた。いずれも本業とほとんど関係がないうえ、買収額に見合うような売上高がない。社外の親しい友人が見つけて、わざわざ英訳して「この記事を見ろ。深刻な内容だぞ」と教えてくれたんだ。 』
 

 一連の買収案件について、日経ビジネスがオリンパス社に質問したところ、「適切な手続き・プロセスを経たうえでの買収であり、会計上も適切に処理している」「評価額はDCF(収益還元)法による企業価値評価により算定されており、外部会計事務所による適正な評価を受けている」という内容の回答があったという。

 しかし、ファクタ誌は指摘している。アルティスの企業価値を算出した公認会計士は将来のキャッシュフローを過大に見積もっていると。3年で売上高が20倍になるとの計算だが、その根拠が薄いとしている。

 ウッドフォード氏は、こうした事実の深刻さを徐々に知っていき、当時の経営判断の真相を追及していくことになる。


 引き続き、マイケル・ウッドフォード氏談
 『2週間ぶりに帰国し、8月1日、新宿の本社に出社した。この記事のことを誰かが話しに来ると思っていた。ところが、誰も報告に来ない。不思議に思い、信頼できる社内の人に尋ねると、菊川剛会長が「記事の存在をウッドフォード社長に話すな」と指示していたことが分かった。

 決算報告書などに署名するのは私だ。従って、企業リスクを伴う取引は、その経緯も含め十分な報告を受ける必要がある。そう書いたうえで、ジャイラス買収で莫大な金額をFAに支払った経緯や、国内3社の買収に関わる詳細な報告を求めた。こうしたやり取りは痕跡を残しておかないとまずいと思い、すべての手紙にCC(カーボンコピー)をつけ、ほかの取締役や監査役、社外取締役にも同時に電子メールで送ることにした。

 確かに、手紙への返答はあった。だが、文面こそ丁寧だが、内容は表面的で、納得できる説明にはなっていなかった。しかも、9月26日に菊川会長に送った手紙に対して彼は同日、こうメールを返信してきた。「あなたと森が(一連の買収について)こんなにメールのやり取りをしていると聞いてびっくりした。時間のムダとは言わないが、時間を食う割に成果はあまりない。社長としての心配は分かるが…」

 うやむやに終わらせようとしている。そう感じて、以降は当社の監査法人であるアーンスト・アンド・ヤングにもCCをつけて送信することにした。

 しかし、オリンパスのガバナンス(企業統治)は全く機能していなかった。それを確信したのは、9月30日の取締役会のことだった。

 その前日、私は英国人の同僚と一緒に、菊川会長と森副社長と会っていた。社長として責任を持って経営するには、役員の人事権もなく、あまりに権限が小さい。そう痛感していたので、菊川会長が持っていたCEO(最高経営責任者)の肩書を譲り受けて、しかも、今後、菊川会長が経営会議に出席しないことも要求した。

 しかし、それを聞いた菊川会長は、「無理だ。そんなことは日本の株主が許さない」と譲らない。そうするうち菊川会長が怒鳴り出した。あまりに失礼な物言いだったので、私も席から立ち上がり、「怒鳴るんじゃない。私はあんたの子犬じゃないんだ」と怒鳴り返した(ちなみに菊川会長のパソコンのスクリーンセーバーは2匹の子犬の画像だ)。そして、「CEOから降りないのなら、私が社長を退任させてもらう」と言った。

 これは彼らにとって好ましくない展開だった。私が辞任すれば、オリンパスの経営がいかにガバナンスに問題があるかが白日の下にさらされることになるからだ。この期に及んで、菊川会長はついに私の要求を承認した。
 (この時に涙を流してCEO退任を懇願したとの報道が日本で流れているが)それは、事実ではない。誰かに足でも折られたら涙を流すかもしれないが、こんなことで私は泣かない。 』


 2001年の社長就任から10年間にわたってオリンパスを率いてきた菊川会長が、ついにその権力をウッドフォード氏に明け渡した瞬間かと思われた。ところが、菊川会長に、そんな気はなかったようである。そのことにウッドフォード氏が気付くのは、わずか1日後の9月30日のことであったという。

 こうした解任劇の真相に、日本企業の膿を見た気がする。これはオリンパスだけの話であろうか。昨日、この解任劇にFBIが捜査に乗り出したという。事は日本企業一社の経営者による背任行為だけでは収まらないようである。企業と社会の闇との悪しき関係が露呈した事件であるような気がする。こうした問題を放置すれば、日本経済に明日はない。
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団塊の世代を突っ走った田舎侍の遠吠えです。聞いてやってください。実話から世評までもろもろですが、一貫して、辛口です。

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